2009年01月12日(月) 06時12分
推進・慎重 弁護士二分 報酬のカード決済導入検討(河北新報)
日弁連が導入を検討している弁護士報酬支払いのクレジットカード決済をめぐり、弁護士間で賛否が交錯している。「時代の変化とサービスの充実」を重視する推進派に、「消費者問題に取り組む弁護士の信頼にかかわる」と反論する慎重派。日弁連は各弁護士会から20日までに寄せられる意見を踏まえ、導入に踏み切りたい考えだが、対立の根は深いようだ。(報道部・若林雅人)
<「日弁連対応遅い」>
「法的サービスも『商品』。カードでの商品売買がこれだけ定着しているのに、それができない『弁護士村』は時代遅れ。日弁連も対応が遅い」
2002年にカード決済を始めた大阪市の弁護士法人事務所の男性所長は、身内への批判をまくし立てた。
「依頼者のために支払い方法の選択肢を増やした」という男性所長の説明は、カード決済導入方針の基となった日弁連弁護士業務改革委員会の容認意見の理由と重なる。
同委員会の伊藤茂昭委員長(東京弁護士会)は「かつて弁護士の業務は訴訟受任が専らだったが、現在は法律相談業務が激増している」と指摘。「相談の大半は1回きりで、5000円や1万円の相談料で終わる。支払い方の選択肢を狭めることは、弁護士への相談を妨げる要因にもなりかねない」と強調する。
<「利用に適さない」>
一方、カード決済の慎重・反対論は、消費者問題に熱心な弁護士らの間で根強い。皮肉にも「消費者破産の要因だったグレーゾーン金利(利息制限法と出資法の上限差)の撤廃に成功した」「割賦販売法の改正も勝ち得た」など、こうした弁護士たちの活動成果も導入理由にされている。
日弁連消費者問題対策委員会の吉岡和弘委員長(仙台弁護士会)は「弁護士と依頼者の関係は将来にわたることもある。多重債務問題は続いており、弁護士が安易に信販会社と提携することに問題がないのか、慎重に検討すべきだ」と訴える。
東北の弁護士会は仙台を中心に慎重・反対論が目立つ。山形県弁護士会の五十嵐幸弘会長は「クレジット契約のトラブルは今も多く、弁護士の利用には適さない。カード決済の必要性を感じている会員もいないと思う」と話す。
弁護士がインターネットで依頼や法律相談を受ける例が増えている現状から、導入に否定的な見方もある。宮城県の男性弁護士は「ネットで受け付け、カード決済すれば、弁護士と依頼者が1度も顔を合わせずに終わるケースも出る。それが本当に依頼者のためになるのだろうか」と疑問を呈した。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090112-00000008-khk-soci