2009年01月12日(月) 00時10分
筋ジス患者の遺伝子情報DB化 国内初(産経新聞)
筋肉が萎縮(いしゅく)する遺伝性の難病、筋ジストロフィー(筋ジス)患者の遺伝子情報をデータベース化する患者登録センターが近くスタートすることが11日、わかった。国立精神・神経センター(東京都小平市)内に置き、遺伝子情報に基づき患者に治験に参加してもらうことで、早期の治療法確立を目指す。
遺伝子は重要な個人情報のため、患者団体である社団法人「日本筋ジストロフィー協会」も独自の遺伝子情報データベースを作り、協力する。治療のための全国的な遺伝情報データベースは日本初。遺伝情報に基づいたテーラーメード医療実現の一歩になりそうだ。
このシステムは、国立病院機構東埼玉病院の川井充副院長を班長とするグループが運営する。昨年12月、筋ジス治療の中心的病院である精神・神経センターの倫理委員会が条件つきで承認した。一部修正したうえで、データベースを早急に立ち上げる。
対象は、筋ジスの中でもっとも症状が重いデュシェンヌ型の患者。男児3500人に1人の割合で発症するという。
神戸大学で平成15年、筋ジス患者で初の遺伝子治療が10歳の男児(当時)に実施され、今年、精神・神経センターも神戸大と手法は一部違うが、遺伝子治療を行うとしており、動物実験からヒトへの応用まで開発が進んできた。このため、対象となる遺伝子情報を持つ患者を全国的に網羅し、副作用の有無など安全性を確かめ治療を一般化できるよう、全国的な遺伝子データベースを作ることにした。
個人情報にあたるため、原則的に患者本人が名前や運動機能状態、遺伝子診断の結果などを登録する。患者登録センターでは研修を積んだ医師が必要情報を確認、遺伝情報の確定などを支援する。
欧州では、欧州連合(EU)の支援でフランス、英国など11カ国が参加する遺伝子情報ネットワーク「TREAT−NMD」が2007年に設立された。日本も将来的にはこのデータベースとリンクさせたいという。川井班長は「TREAT−NMDと同レベルの正確さで患者の遺伝子情報を登録することで、世界の最新の治験に日本の患者も参加することができる。海外で標準的に使用されながら日本で承認が遅れ、使用できない『ドラッグ(薬)・ラグ』の問題を、筋ジス患者の治療では解消することにつながる」と話す。
ただ、川井班の研究は平成20年から3年間と当面、期間が定められていることや遺伝子情報の管理に不安を覚える患者もいることから、日本筋ジストロフィー協会も、希望する患者の遺伝子情報をデータベース化し管理する。患者団体が主体的に遺伝情報データベースを作るのも日本初。
日本筋ジストロフィー協会の貝谷久宣理事は「一日も早い有効な治療法を確立するのは患者やその家族の悲願。ただ、患者の遺伝情報が安易に利用されないような仕組みを作る必要がある」と話している。(杉浦美香)
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【用語解説】筋ジストロフィー
筋萎縮と筋力低下が進行する遺伝性疾患。もっとも数が多いデュシェンヌ型は国内に5000人の患者がいるといわれる。筋肉のジストロフィンというタンパク質が破壊され2〜5歳で発症、10歳ごろには歩行困難になり、20代で呼吸不全や心疾患で亡くなることが多い。確立された治療法はなく、遺伝子治療の実用化が切望されている。
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