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2009年01月12日(月) 03時03分

元厚生次官宅襲撃2か月…依然多い図書館の名簿利用制限読売新聞

 元厚生次官宅連続襲撃事件から約2か月。殺人容疑などで逮捕された小泉毅容疑者(46)(鑑定留置中)が「元次官らの住所を国会図書館で調べた」と供述したことがきっかけで始まった名簿類の利用制限が、今も多くの図書館で続いている。

 読売新聞が全都道府県と県庁所在地、政令市の計98自治体で調べたところ、4分の1以上にあたる25自治体の図書館で11日現在、何らかの利用制限措置をとっていることが分かった。

 それによると、今回の事件をきっかけに、「厚生省名鑑」(2001年版まで)や、全中央省庁の「職員録」(1995年版まで)など、個人の住所や電話番号が書かれている名簿類の利用方法を変えたのは28自治体。

 東京都、宮城県など11自治体は閲覧を禁止。京都市のように、住所や電話番号を除く内容だけを職員が口頭で伝えるケースもある。

 閲覧は認め、コピーだけ禁止したのは9自治体。このほか、川崎市(職員が立ち会う)▽滋賀県(申込時に住所、氏名を書かせる)▽大阪市(閲覧する座席を指定)−−など8自治体が利用方法を変えた。

 このうち、制限を解除したのは3自治体にとどまる。事件から1か月後の12月18日、複写禁止を解除した鳥取県の場合、「事件の概要がわかり、模倣犯が出る可能性が低いと判断した」とする。一方、閲覧禁止を続ける都立図書館は「緊急措置」と説明しながら、解除の予定はないという。

 これに対し、最初から利用制限を設けなかった三重県立図書館の大石昭一館長は「国民の知る権利に応えるために、所有する資料を提供するのが図書館。その役割を果たすのは当然」と強調している。

 平松毅・姫路独協大法科大学院特別教授(情報法)は「使い方によっては悪用できる情報はいくらでもあり、事件が起きたからといって利用制限するのは図書館の使命の否定。まして厚生労働省の要請で制限したことは自殺行為だ」と指摘。根本彰・東大教授(図書館情報学)は「刑事事件が背景にある以上、緊急避難的に閲覧制限をとるという判断は、ある程度理解できる。ただ、どのような制限を、なぜ、いつまで設けるのかをきちんと示す必要がある」としている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090111-00000046-yom-soci