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2009年01月12日(月) 02時33分

<温暖化>主犯は人間活動か自然変動か 専門家が学会誌討論毎日新聞

 温暖化の犯人は何か。「エネルギー・資源学会」(会員約2000人)は学会誌最新号で、人間活動で排出される二酸化炭素を主因とする研究者と、その懐疑論者ら計5人の意見を戦わせた特集「地球温暖化:その科学的真実を問う」を掲載した。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、20世紀後半の温暖化は人為的との報告書を公表して2年。今も対立する両者の主張を比べるのに役立ちそうだ。

 特集には、IPCCに参画した江守正多・国立環境研究所室長のほか、懐疑論を展開する赤祖父俊一・米アラスカ大名誉教授▽伊藤公紀・横浜国大教授▽丸山茂徳・東京工業大教授、中立的な立場の草野完也・海洋研究開発機構プログラムディレクターが参加した。

 IPCCの「大気や海の温度の上昇、氷河の溶解など温暖化には疑う余地がない」との指摘には、全員が部分的を含め同意した。一方、「20世紀半ば以降の気温上昇のほとんどが人為起源の温室効果ガスの増加である可能性が非常に高い」との見解は、江守室長以外の4人が否定した。

 赤祖父名誉教授は「二酸化炭素の排出は増え続けているが、気温上昇は01年ごろから止まった。気温変化は自然変動の寄与が大きい」と主張した。伊藤教授は「米国での気温測定の精度に課題がある。地球全体を観測する衛星データは79年以降しかない」と観測自体の問題を指摘した。

 同様の議論はシンポジウムなどで実施されているが、「その場で消えゆく言葉という限界」(編集実行委員会)がある。誌上では、5人が主張の根拠としたデータを示し、インターネット(http://www.jser.gr.jp/)でも一般公開している。

 企画した吉田英生・京都大教授は「温暖化の社会的影響は大きく、科学的な検討が焦眉(しょうび)の急だ。物事を正しく知ろうと意見交換するのが科学であり、人間の良心だ」と話す。【田中泰義】

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