2009年01月12日(月) 02時33分
<成人式>秋葉原事件の犠牲者の友人ら、「生と死」かみしめ(毎日新聞)
成人の日を前に、各地で11日、成人式の催しがあり、友との再会を喜ぶ新成人の姿が見られた。だが08年6月に東京・秋葉原で起きた17人殺傷事件で犠牲になった大学生2人の姿はなく、同級生たちは悲しみを乗り越えての門出となった。岩手・宮城内陸地震の被災女性は亡き祖母から贈られた振り袖を着て式に臨み「おばあちゃんに見てほしかった」と目に涙を浮かべつつ、看護師への夢を語った。【町田結子、柳澤一男、伊藤絵理子】
埼玉県熊谷市の藤野和倫(かずのり)さん(当時19歳)は歩行者天国の交差点を横断中、元派遣社員の加藤智大被告(26)運転のトラックにはねられて亡くなった。
藤野さんは市内の小学校を卒業後、中高一貫校へ進学。保育園から小学校まで一緒だった熊谷市の女性は「一緒に祝いたかった」と思いながら成人式に出席したが、懐かしい顔が目に飛び込み笑みがこぼれた。「こうして普通に生きていることが幸せなことなんだ」と改めて思った。
小学校は1学年30人。皆が仲良しで家族みたいだった。藤野さんは「オカズ」の愛称で親しまれ、ムードメーカーだった。習っていた空手の組み手を披露したり、物まねをしては周りを笑わせた。
女性は事件翌日、藤野さんの訃報(ふほう)を知った。最後に会ったのは何年も前だったが、思い出が鮮明によみがえり泣き崩れた。翌日、同級生7人とともに現場を訪れ、足がすくみながらも献花台へ向かった。
成人式の会場では、藤野さんの話題は出なかった。皆が胸にしまってあるはずだが、誰も口火を切ることができなかったのかもしれない。小学6年の冬。大人になったら一緒に酒を飲もうと約束した。同級生全員が20歳を迎え、酒を飲むことになっている今年3月、女性は藤野さんの思い出話をしようと思っている。
藤野さんと一緒に歩いていて犠牲になった千葉県流山市の男子大学生(当時19歳)の父親は、市文化会館で開かれた式典に出席した。帰りがけ、息子と親しかった中学の同級生と会い「改めて焼香に伺います」と言われ感極まった。父親は「息子も元気でいれば、多分、彼らと思い出話ぐらいはしただろう。本当に残念です」と無念さをにじませた。
中学時代のクラスメートで東京都八王子市の大学2年、新井高志さん(20)は「ハンドボール部で元気にプレーしていたころを思い出します。葬儀には行かれなかったけれど、冥福を祈りました。悲しいし、悔しい」と話していた。
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