2009年01月12日(月) 01時58分
やる気? 忠誠? 厚労省「愛省バッジ」1000個3日で完売 (産経新聞)
雇用、年金、医師不足、薬害−。何事につけ世間から激しい批判を浴びている厚生労働省が、国民のためになる政策を堂々と遂行しようと、職員の「愛省精神」を高める作戦に打って出た。頼るのは省のシンボルマークをかたどったバッジ。舛添要一厚労相の肝いりの作戦だ。用意した1000個はあっという間に完売。一見、職員らのやる気は高まったかに見えるのだが、職員の中からは「自民党の大臣への忠誠心を公言するようなもので、おっかない」と、政界再編をにらんで冷ややかな声も漏れてくる…。(赤堀正卓、神庭芳久)
バッジは直径15ミリの円形で、仕事始めの1月5日から使用が始まった。昨年決まった、青と赤を基調に人と人とが手を取り合う姿をデザインした厚労省のシンボルマークがあしらわれている。省内の文具店が、マークの使用許可と販売の許可を得て作った。
1個550円で職員のみに販売。「不正利用されることを防ぐため」(担当者)に、購入時には職員であることの身分証明書の提示が必要で、台帳に氏名などを記載しなければならない。
舛添厚労相は「厚労省改革をすすめ、自分の職場に誇りを持ってしっかりやろうということで作った」と、作製の理由を話している。
他の省庁に比べ、国民生活に直結する政策課題の多い厚労省は、国民からの厳しい視線にもさらされがち。とりわけ、ここ数年が不祥事も相次いだこともあって、世論の風当たりは厳しい。
江利川毅事務次官が平成19年に就任した際に、職員を前にした訓示で、「家族に就任を反対された。皆さんの家族も肩身の狭い思いをしていると思う」と涙ぐんだ光景は、追い詰められる厚労省職員の姿を象徴していた。
そのためバッジ作製には、「任意ではあるが、積極的に購入していただき、職員としての使命を常に意識し、より良い厚生労働行政の推進に努めてもらうことを期待します」(官房長名での職員あての文書)という、起死回生への熱い思いが込められている。
当初は昨年12月上旬の販売を考えていたが、元厚生事務次官ら連続殺傷事件の影響で、1月5日の販売開始となった。驚くべきことに、用意された1000個のバッジは発売3日で完売した。文具店では3カ月での完売を見込んでいたため、「びっくり!」と驚きを隠さない。
ただ、購入層には偏りがあるようだ。文具店によると、購入者の年齢層は高めで、幹部クラスが多い。「ある局長は自ら買いに来た。若手職員の購入者は圧倒的に少ない」と話す。
若手男性職員の一人は「外出するときは恥ずかしくてバッジをはずしてしまった」。一方、「帰属精神が出る。胸に付けたときに高揚感があった。ぐっと違った。やる気が出た」と話す男性職員もいる。また、「舛添大臣に忠誠を尽くす人が付けるもの。今年は政権交代があるかもしれないのに、自民党の大臣への忠誠をバッジで公言するなんて、おっかなくてできない」という役人らしい本音を語る職員もいた。
文具店では2月上旬に1000個を再入荷する予定だが、本省勤務の職員は約3000人。果たしてバッジの売れ行きしだいで、今年の厚労省の“やる気”は占えるのか?!
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