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2009年01月12日(月) 13時00分

世界の富豪の資産がスイスから大移動 アジアの小国シンガポールの野望MONEYzine

 シンガポール金融通貨庁がまとめた2007年末時点の同国の資産運用残高は前年比32%増の1兆1730億シンガポールドル(約73兆円)で7年連続の2ケタ増だった。08年中にさらに多くの資金が同国に集まったとみられるが、その資金の流入元の1つがスイスだ。

 スイスと言えばスイス銀行と呼ばれる大手プライベートバンク (富裕層向け資産運用サービス)が有名で、その顧客情報の守秘義務においては厚く信頼されてきた。刑事事件が起こっても原則として顧客の情報は外部に漏らさないことでマネーロンダリングの中継地としてもしばしばスイス銀行の口座が使われることもあったが、永世中立国としての政治的立場や税制の優遇、何があっても顧客の資産を守るというスタンスから世界中の富裕層から愛されてきた。

 しかし最近になって長年にわたり積み重ねてきた信頼が揺らぐような出来事が起こっている。世界最大の富裕層向け銀行であるスイス・ユナイテッド銀行(UBS)が、米サブプライム住宅ローン問題に端を発した金融市場の混乱で07年通年で40億スイスフランの純損失を計上、昨年10月にはスイス政府より5000億円を超える自己資本注入と6兆円近い不良資産買取を受ける事態となり経営危機に陥ってしまった。また続く11月に米国の納税者が脱税目的で口座を利用していることが問題となった件でUBSが顧客情報を米当局に提供したことが報道されると守秘義務の信用性が疑われ、「いっせいにスイスからシンガポールに富裕層の資産が流れ出した」(国際アナリスト)という。

 一方、シンガポールは国家戦略として高収益が見込めるプライベートバンキング業務を強化中で、これまで「アジアにおけるスイス」としてアジア系の富裕層をシンガポールへ誘致してきた。所得税に上限を設け、キャピタルゲインおよび金利収入、さらにシンガポール国外の収入および資産も無課税にするなど富裕層とって魅力的な優遇を行い、同国のプライベートバンキングは急速に発達してきた。

 2007年の一人当たりのGDPは日本を抜いてアジアで首位になったシンガポール。国土面積は世界175位の小国ながら、金融危機のさなか安全性を求める富裕層の資金をスイスや米国からかき集め、東南アジアの金融センターとして不動の地位を築こうとしている。

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