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2009年01月12日(月) 20時28分

成人式 阪神大震災で被災、亡き母に誓う美容師の道毎日新聞

 成人の日の12日、各地で成人式があり、「平成生まれ」が初めて大人の仲間入り。阪神大震災(95年)の被災地、神戸市では、専門学校生、銘田(めいだ)奈津紀さん(20)=同市東灘区=が、震災で亡くなった母との思い出を抱き、美容師になる夢に向かって歩むことを誓った。

 震災で、両親と姉と4人暮らしの自宅は全壊。6歳だった奈津紀さんは泣きじゃくる姉と自力で脱出したが、33歳だった母さつきさんは倒れた鏡台の下敷きに。奈津紀さんはいつもは母の隣で寝ていたが、前夜はテレビを見ようとして「早く寝なさい」と言われたことにすねて、隣の部屋で姉と寝ていた。

 さつきさんの生前、風呂上がりに互いに髪の毛をドライヤーで乾かし合った。くせ毛で「私がきれいにしてあげる」と奈津紀さんが話すと、さつきさんは「私はこれでいいのよ」と笑った。

 そんな思い出から、07年4月、大阪市の美容専門学校に入学。しかし、少しずつ足が遠のいた。「美容師になってもママのためにやってあげられない」。何もする気になれず部屋に閉じこもり、5キロやせた。3カ月後、高校時代からの友人に「このままでいいの? ママに笑われんで」としかられた。「ほんまやな。もう1回やってみるわ」。出席日数が足りず留年が決まったが、夢を実現しようと学校に通い始めた。

 成人式の前日、髪形を変えた。振り袖も淡い紫色に。「人生でたった一度の日だから、誰ともかぶりたく(同じ様でいたく)ない」。この日は式に向かう前、自宅の仏壇の前で手を合わせ、心の中でさつきさんに話しかけた。「美容は楽しいよ。人を元気にできる美容師になるからね」【藤顕一郎】

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