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2009年01月11日(日) 20時25分

【震災14年】元尼崎市消防局長、地域FM局の底力をアピール産経新聞

 阪神大震災当時、兵庫県尼崎市消防局長として混乱する現場の指揮に当たった堂本嘉巳さん(71)=同市在住=が災害発生時におけるコミュニティFMの有用性をアピールするため、各地の放送局を取材し、毎月1度、消防専門誌にコラムを執筆している。これまでに14都道府県の計15局を訪問。「地域のきめ細やかな情報を提供するコミュニティFMが、必ず災害時の市民の命綱となる」と全国を駆け回っている。

 堂本さんは平成10年の退職後、同市域を放送エリアとする「FMあまがさき」の「防災キャスター」に就任。定期的に防災対策の必要性を訴えるとともに、台風など緊急事態が起きるたびに出動し、市民に注意を呼びかけている。17年4月のJR福知山線脱線事故では、携帯電話で現場の状況を中継で伝えた。

 震災当時、自宅で被災した堂本さんはすぐに市の防災センターに駆けつけ、約1カ月、自宅に帰ることなく、現場を指揮。このとき、避難場所や安否情報が入らず、多くの被災者が困窮する姿を目の当たりにしたことから、停電や断水など地域情報を臨機応変に伝えられるコミュニティFMの存在に注目し、アピールしていくことを決意した。

 昨年1月からは専門誌「近代消防」を発行する「近代消防社」(東京都港区)の依頼を受け、取材と執筆活動を開始。自身が関係機関との情報の共有に苦労した経験から、取材の際は地元の警察や消防、自治体などの関係者からも話を聞き、放送局との連絡体制などを念入りにチェックしているという。

 堂本さんはこれまでの取材を通じて、「FMくらしき」(岡山県倉敷市)が防災情報が流れると自動的に電源が入るラジオを地元のケーブルテレビと共同開発するなど、各局が積極的に独自の対策に取り組んでいることに安心する一方、ラジオの認知度の低さが依然、大きな課題となっていることを痛感。「今後も時間が許す限り放送局を回り、存在意義を訴えたい」と誓う。

 その心は退職から10年を経てもなお、現場の第一線に立ち続けている。

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