被爆ピアノと出会い、中断していた演奏活動を再開した香川県坂出市のジャズピアニスト好井一條さん(62)=本名敏彦・広島市東区出身=が10日、広島市安佐南区の矢川ピアノ工房で被爆ピアノコンサートを開いた。胎内被爆者であることを伏せて生きてきた好井さんは今、四国を拠点に被爆ピアノを囲む輪を広げている。
曲目は会場で決める。この日は約30人の聴衆を前に、胎内被爆者としての生い立ちや思いを語った後、「マイウェイ」「千の風になって」などジャズやポピュラー、童謡を織り交ぜ、20曲を奏でた。
2007年10月に父の博さん(89)が地元の小学校で初めて被爆体験を語ったことをきっかけに5カ月後に「原爆被害者の会・坂出」が再結成された。被爆ピアノの演奏会も開くことになり、好井さんが駆り出された。
昨年8月6日、好井さんは「被爆ピアノを囲む会」を設立した。会員は香川県を中心に250人。活動資金は、被爆証言活動を続ける博さんが提供した。
「たくさんの人が亡くなった広島で生き残った。残りの人生を被爆ピアノの演奏にささげたい」。好井さんは広島で演奏し、その思いを強くしている。
【写真説明】西区の小学校で被爆したグランドピアノを演奏する好井さん