2009年01月10日(土) 00時00分
なぜ増える?偽装ラブホテル 規制の網くぐり抜け“おいしい蜜”(産経新聞)
ビジネスホテルや旅館などと届け出ながら、実際はラブホテルとして営業を続ける「偽装ラブホテル」問題が後を絶たない。繁華街や駅前など経営者にとって立地条件の良い場所が「禁止区域」となっているケースが多いためだが、監督権のある行政側が放置してきたことも背景にある。
■“おいしい商売”
「ビジネスホテルよりラブホテルの方が集客力が大きく、利益もあげられる」。昨年兵庫県警が摘発した偽装ラブホテルの経営者らは、調べに対してこう供述した。
ビジネスホテルに比べて客の回転がよく、人件費も抑えられるラブホテルは経営者にとっては“おいしい”商売のようだが、子供たちへの教育上の配慮などから建設には規制がある。
風俗営業法では学校や図書館の周囲200メートルを「禁止区域」と定め、旅館業法や各自治体もそれぞれの条例で、ラブホテルの建築に規制をかけている。
■法の抜け穴
禁止区域には、繁華街や駅前などラブホテルにとって立地条件の良い場所が含まれるケースが多い。全国の警察に先駆けて兵庫県警が偽装ラブホテルに対し専従の対策室を設置した背景には、「法の抜け穴」をくぐり抜け、こうした場所で偽装してラブホテルの営業を続ける業者が後を絶たないためだ。
建築時にはビジネスホテルとして自治体の許可を得る裏で、営業開始直後に内部を改装。旅館業法で定められた宿泊者名簿を置かなかったり、タッチパネル形式の受付を設けるなど、違法な状態で営業を続けている。「あの手この手で摘発から逃れて違法営業を続ける業者は後を絶たない」(県警幹部)のが現状だ。
■行政側が放置
関係者によると、偽装ラブホテルは決して新しい問題ではない。旅館業法違反は行政処分の対象だが、監督権を持つ行政側が「人手が足りず、全施設を調査できていない」といい、これまでほぼ放置されてきた。
また、風営法を所管する警察と、旅館業法を所管する行政との連携に課題が残されている自治体も少なくない。住民が相談にいくと、警察と行政の間でたらいまわしにされることもある。
さらに中央と地方自治体の“対話”も十分とはいえないという。偽装ラブホテルの規制は自治体の条例にも基づいており、全国一律の規制は難しい。例えば大阪市はホテル外装の配色を規制するが、配色規制をしない自治体もあるなど規制はまちまちだ。
■立ち上がる住民
このような現状に対し、民間レベルでの活動は活発化している。「全国偽装ラブホテルをなくす会」(神戸市)は、全国各地で反対運動を続ける市民団体と連絡を取りあい、住民運動の手法などについて情報交換を行っている。同会の要請で、昨年3月の参議院委員会では民主党議員が警察庁などに偽装ラブホテルの件数を質問したほか実態把握を要請した。
同会の馬場敦子代表(31)は「住民反対運動は発端にはなるが限界もある。子供たちが犯罪に巻き込まれる可能性もある中で、業者の『やりたい放題』を放置せず、自治体と中央、行政と警察が連携して規制を強化してほしい」と訴えている。
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