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2009年01月10日(土) 13時00分

創業家出身の新社長はトヨタを救えるか 「豊田家のプリンス」を待ち受けるいばらの道MONEYzine

 トヨタ自動車は9日までに、豊田章男副社長(52)を社長に昇格させる人事を固めた。6月末に開く予定の株主総会後の取締役会で正式決定し、渡辺捷昭現社長(66)は副会長に就く。章男氏は豊田章一郎名誉会長(83)の長男でトヨタの事実上の創業者である豊田喜一郎氏の孫で、トヨタで創業家が社長となるのは14年ぶりだ。

「次期社長は創業家出身の章男氏で決まり」。2005年に章男氏が副社長に就任した時からそういった声は聞かれてきたが、「まだ早い、次の次の社長で5年後ではないか」などの慎重な意見もあり、またトヨタの業績回復のメドが立つまでは渡辺現体制が続くという見方も強かった。それだけにこのタイミングでの昇格決定に驚いた業界関係者もいたようだ。

 章男氏は慶應義塾大学の在学中にはホッケー部に所属しており、今もスポーツ好きで知られる。同じ慶大出身で学生時代に男声合唱団に所属していた渡辺現社長とは雰囲気も異なる。卒業後は米国ボストンのバブソン大学でMBAを取得、その後84年にトヨタに入社すると2000年に取締役就任、02年常務、03年専務とスピード出世を重ねてきた。05年に副社長に就任すると国内販売に加えて海外販売も担当し、トヨタでは異例となる国内外の営業を一手に握るという立場も経験した。

「豊田家のプリンス」として創業家から将来を嘱望されてきただけに章男氏の社長としての手腕に期待が高まるが、現状のトヨタを取り巻く状況はきびしい。急速な円高や金融危機の影響による日米欧を中心とした販売不振で09年3月期の連結営業損益が初の赤字に転落する見込みで、連結販売台数見通しも824万台から754万台に下方修正した。国内の消費不振は09年に一段と拍車がかかる可能性が高く、いばらの道が新社長を待ち受けている。

 新車の販売不振は金融危機によるものだけではなく従来型のクルマに対するニーズが世界的に頭打ちに近づいてきているなど、自動車産業の構造的な要因によるものもあり、コスト削減や投資の見直しだけでは一時的に業績を回復できても継続的な成長は望めない。環境やエネルギー問題に対応するためトヨタは得意とする環境技術を強化し、20年までにハイブリッド車を全車種に展開する方針だ。かつて繁栄を謳歌した米国のビッグスリー(米自動車大手3社)が経営破綻寸前に陥るなど、大企業でもいつ潰れるかわからない時代だけに21世紀の生き残りをかけて章男氏の力量が問われることになる。

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