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2009年01月10日(土) 00時00分

CES 主役なき家電ショー読売新聞

 世界最大の家電見本市、国際家電ショー(CES)が8日、米ラスベガスで開幕した。世界的な景気減速で、薄型テレビなどデジタル家電の失速傾向が鮮明となっており、出展した家電各社も消費喚起に苦心している。来場者は前年を下回る見込みで、開催地ラスベガスも不況の風に見舞われている。(ラスベガス 池松洋)

薄型TV頭打ち

 「消費は大きく減速している。消費者が求める商品を手ごろな値段で提供しなければならない」。CES開幕に際して基調講演を行ったソニーのハワード・ストリンガー会長兼最高経営責任者(CEO)は、家電業界を取り巻く厳しい現状に危機感をあらわにした。

 主力の薄型テレビは、昨年まで各社とも宣伝を兼ねて画面の大型化を競ったが、今年は大型化の記録更新はない。薄型化もパナソニックが厚さ8・8ミリ・メートルのプラズマテレビを展示した程度で、頭打ちの様相だ。

 こうした中で、各社が力を入れるのが、インターネットや家電製品相互のネットワーク接続機能の強化だ。付加価値を高めることで商品性向上につなげたい思惑がある。ストリンガー会長は「2011年までに90%のソニー製品がネットワークにつながるようにする」と宣言した。

 ソニーとパナソニックは、それぞれ米ネット販売大手アマゾン・ドット・コムが提供する動画の配信サービスを利用できるテレビを紹介。ソニーは多くのネットサイトが閲覧できる機能と無線LANを同時に搭載した世界初の小型デジタルカメラを発表した。

 しかし、数年前から各社とも家電のネット接続機能の強化に乗り出しており、「消費者の需要を大きく喚起できるまでに至っていない」(業界関係者)のが現状だ。

「低価格に活路」

パナソニックが展示した厚さ8・8ミリのプラズマテレビ(8日、ラスベガスで)=池松洋撮影

 低価格を意識しながらも新機能を組み合わせた商品が目立つ。シャープが展示したブルーレイディスク(BD)再生機付きの液晶テレビは、面倒な接続なしで高画質ソフトを楽しめることが売りだ。東芝の液晶テレビは画質面の差別化で勝負した。高性能半導体「セル」を搭載し、ハイビジョン画質をさらに微細化する機能で、通常の液晶テレビでは実現できない画質をアピールする。

 パソコンは、低価格のミニパソコンが目立つ。ソニーの「VAIO Pシリーズ」は、ネット接続機能を充実させた。安価な台湾メーカー製と一線を画す高性能ぶりを訴えている。

「不況の影」重く

 世界同時不況が強まる2009年は、家電・IT業界にも一段と厳しい年になりそうだ。09年の米家電売上高は前年比0・6%減と低迷すると予想され、デジタル家電市場を先導してきた液晶テレビなど薄型テレビの出荷額も初めて前年割れとなると見られている。

 米市場の中核商品の一つである日本製の32型液晶テレビは、年末商戦で採算割れの400ドル台で売られるなど、価格破壊が一段と強まり、家電各社の体力を消耗させている。

 家電市場に忍び寄る停滞ムードを反映して、CESも出展企業数は昨年と同じ2700社を維持しているものの、来場者数は昨年より1万人少ない13万人にとどまる見通しだ。

 カジノ客の減少を年初の大型イベントで盛り返そうとした開催地ラスベガスも期待はずれの状態だ。

失速が目立つ2009年の家電・IT市場の予測 米家電売上高1710億ドル(▼0.6%) テレビ世界売上高880億ドル(▼18%) 携帯電話世界出荷台数   (▼1.9%) パソコン世界出荷台数3億1390万台(3.8%)

*米家電協会、ディスプレイサーチ、IDC調べ。かっこ内は対08年比伸び率(▼はマイナス)

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20090113nt07.htm