2009年01月10日(土) 15時01分
阪神大震災14年:東灘の入谷さん、被災フィルムで個展−−10日から西宮で /兵庫(毎日新聞)
◇焦げた写真に残るつめ跡
阪神大震災で家が倒壊、全焼した神戸市東灘区のアマチュアカメラマン、入谷康一さん(61)が、焼け残ったフィルムからプリントした写真の個展を14年ぶりに開く。長野・伊那谷の風景や人がテーマで、中には端が焼けて変色している写真もある。入谷さんは「生き残ったフィルムは私の生きる力。写真を見た人にも元気になってもらえれば」と話している。10日から西宮市甲子園口1の「ギャラリーわびすけ」で。
入谷さんは、山岳雑誌に載っていた特集記事がきっかけで、長野県の天竜川沿いの伊那谷を撮影するようになった。3年間で約5000枚を撮りだめ、大阪市内での個展を翌月に控えていた時、阪神大震災に遭った。入谷さん一家4人は無事だったが、隣のマンションが傾き、入谷さんの家を押しつぶした。同日午後には近くの火事が延焼、家は焼けてしまった。
「すべてを失ってしまった」とぼうぜんとしながら2日後、がれきと化した家の前に立った入谷さんが見つけたのが、焦げた愛用のカメラと個展のためにまとめておいていた撮影済みフィルムの束だった。フィルムは所々燃え、泥もかぶっていたが、フィルム会社の協力で再生し、個展は予定通り開くことができた。
今回使う写真はその個展で使ったものだ。端の部分が焦げてなくなるなど、伊那谷の美しい写真の中に震災のつめ跡がかいま見える。
個展は10〜12日と17〜18日の計5日間、午後1時から午後5時まで。無料。問い合わせは同ギャラリー(0798・63・6646)へ。【幸長由子】
〔神戸版〕
1月10日朝刊
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090110-00000143-mailo-l28