2009年01月10日(土) 20時38分
年金記録訂正なかなか進まず 発覚から2年、人材足りず(産経新聞)
基礎年金番号に未統合の年金記録が5000万件もあることが判明してから、来月で2年が経過する。社会保険庁は全受給・加入者約1億1000万人に自らの記録確認を促す「ねんきん特別便」の発送を昨年中に完了したが、記録訂正されても正しい年金額が支払われるまで時間がかかり、総務省の第三者委員会で記録訂正がなかなか認められないなど、問題解決への道のりは遠い。小人数で複雑な案件を処理している現場の実情が背景にある。
■支給まで1年
「84歳の男性から手紙が来た。昨年10月、昭和21年から34年までで11年間分の厚生年金が社会保険事務所で見つかったが、『年金の支払いは1年後くらいになる』と言われたそうだ」
8日の衆院予算委員会での民主党の仙谷由人元政調会長の指摘に、舛添要一厚生労働相は「処理を急がせる」と答えたが、この男性に約1800万円の未支給年金がいつ支払われるかは不明だ。
社保庁によると、記録訂正から正しい年金が支払われるまでに要する時間は、社保事務所から東京都内の社会保険業務センターに申請書類が届いてから、5年の時効期間内の記録で平均7カ月かかる。5年より前の記録だと、さらに3−4カ月の処理時間を要する。
■80万件が未処理
記録訂正が認められても、正しい年金額の支給に結びつくまで、なぜこうも長くかかるのか。
背景の1つに事務処理態勢の問題がある。年金受給開始年齢になった際の事務処理は全国の社保事務所で行われるが、記録訂正による受給開始後の処理は業務センターが一手に引き受けて処理している。
後者のケースは平成18年度は約3万7000件だったが、記録問題発覚後は毎月万単位で申請があり、業務センターの処理はパンク状態に陥った。社保庁は、20年1月時点で38人だった業務センター担当職員数を、社保事務所などからの応援で約280人に増やしたが、未処理件数は約80万件まで膨れあがった。
舛添厚労相は担当職員をさらに500人まで増やし、業務センターの処理スピードを3カ月程度に縮める方針を示したが、複雑な年金支給処理に精通する職員は限られる。社保庁幹部は「有能な職員を業務センターに集め過ぎると社保事務所の処理が滞る恐れが出てくる」と懸念する。
■低下する認定率
保険料の領収書といった公的証拠がない場合に記録訂正を判断する総務省の年金記録確認第三者委員会の審査も厳しくなりがちだ。政府は当初、「性善説に立ち、物的証拠がなくても本人の人柄や態度を見て総合的に判断する」との方針を示していたが、ここ数カ月の認定率は5割以下に低迷している。
総務省は「審査の結果、そうなっただけ」と釈明するが、背景には「21年3月までに19年度中に受け付けた約4万9000件の処理を終わらせる」とした政府公約の存在がある。丁寧な聞き取りをしていたのでは時間が足りなくなるというわけだ。おのずと物証重視の姿勢に傾くが、何十年も前の物証や証言を探すのは難しい。
第三者委の調査に携わった社会保険労務士は「審査を急ぐあまり関係者のヒアリングなどを十分に行わなかった」と振り返る。総務省は「一度却下されても、新証拠が出てくれば審査し直す」と説明するが、特に会社側に新たな保険料支払いを求める厚生年金の訂正ケースでは、会社側の協力を得にくいとされる。却下された人からは「何のための第三者委なのか」との批判も強まっている。
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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090110-00000573-san-pol