2009年01月10日(土) 13時11分
女児を殺害、遺体の一部を火鍋で食った!? 中国・広州の「食人」事件(産経新聞)
中国の広州市で、女児(4)を殺害し、バラバラに切断した遺体を冷蔵庫に保管していた男(33)が逮捕された。報道によれば、男は遺体の一部を「火鍋」に入れて食べた疑いが強いことが地元の警察当局の調べで判明したという。付近では、幼い子供が相次いで行方不明になっており、連続「食人」事件に発展する可能性も出てきた。もともと奇行が目立った男の“猟奇的”な犯罪の一部始終を、報道を元にたどった。(桜井紀雄)
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■床一面に女性や女児の衣服
「広州日報」や「信息時報」などの地元紙や、香港紙「星島日報」の報道を総合すると事件の概要はこうだ。
事件は1月2日、中国南部沿海部の都市、広州郊外の集合住宅で起きた。被害にあったのは、両親と3人で暮らす李伶俐ちゃん。隣には祖父母が住み、ひとりっ子として両親、祖父母から溺愛(できあい)されていた。
その家族が外出したすきの犯行だった。
午前8時ごろ、父親は1月1日に買ったばかりの服とくつを伶俐ちゃんに着せ、妻とともに近くの縫製工場に出勤。祖母も仕事に行き、祖父は近所の女性に孫を預けて廃品回収に出かけた。
「いつもこうでした。1時間ちょっとすれば戻りますし、いつもなら何も起きなかったのに…」
地元記者を前に祖父はそう唇をかんだという。
だが、9時半過ぎに帰宅した祖父は孫娘がいないことに気付く。「玄関で遊んでいたと思ったら目を離したすきにいなくなったの」と伶俐ちゃんを預かった近所の女性は説明した。
「友達とでも遊んでいるんだろう」と近所を聞いて回ったが、見当たらず、昼に戻った両親らと警察に届け出た。
狭い通路を隔て20平方メートル足らずの部屋が100世帯以上長屋状に密集する住宅地。警察は一軒一軒くまなく当たったが、まったく手掛かりがつかめなかったという。
「あいつじゃないかと真っ先に思いました」
取材に訪れた報道陣に、こう話したのは祖母だった。祖母は正午ごろ、日ごろから不審な言動が気になっていた「張」という姓の近くの男の家を訪ねた。
「見てないけど」
男はしらばっくれたという。
近所の人と男の部屋を確認すると、異臭が漂っていたうえ、女性や女の子ものの大量の服が床一面に積み重ねられていた。だが、孫娘の姿はなく、部屋を後にしたという。
「伶俐はあの服の山に隠されていたかもしれないのに…」。祖母の悔やんでも悔やみきれない様子が報道されている。
■「お前はそれでも人間か!!」
それでも疑念が晴れなかった祖母は2時間後に再び男の自宅を訪ねた。さっきはなかったはずの血がドアに付いているのを見た。まだ、乾いてもいない。
だが今度は、男はドアを開けようとしない。近所の人と力ずくでドアを開けると、絨毯が真っ赤に血で染まっていた。
「これは何?」
問いつめる祖母に、男は「鴨の血ですよ」と平然と言ったという。
「鴨はどこなの!」
言葉を継ぐ祖母に、男は押し黙った。
警察が踏み込み、部屋を捜索したが、伶俐ちゃんはいない。あるのはワンドアの小型冷蔵庫だけ。冷蔵庫の扉を開けた捜査員の目に飛び込んできたのは、切断された女児の頭部と体の一部だった。
「お前はそれでも人間か!!」
捜査員の怒号が響き渡ったという。
警察は殺人容疑で男を緊急逮捕。近所の人たちは、無表情なまま連行される男をただ見つめていた。
報道によれば、警察は男の部屋から冷蔵庫や凶器とみられる大小複数の刃物を押収した。男は殺害と遺体損壊の事実を全面的に認めているという。遺体は8つに切断したとされるが、6部位しか見つかっていない。
調べでは、残る2つの部位は、煮立った「火鍋」に入れ、調味料を掛けて食べた疑いが強いという。6部位は「後で味わうため」冷蔵庫に入れていた可能性が高いとみて捜査している。
■女装で出歩き「人肉はうまい」と発言
男は中国内陸の四川省の出身で、2年前からこの住宅地に住み始めた。
いつも1人で、近所付き合いはなく、男のフルネームを知る人もほとんどなかった。近所の人の話では、縫製工場に勤めていたが、今は失業して終日、家にこもりきりだったという。
だが、奇行ぶりは有名で、伶俐ちゃんの失踪を聞いて「男の仕業では」と思った住民は祖母ばかりでなかった。
女性服を集めるだけではなく、自ら女性もののワンピースを着て出歩くこともあった。ある朝には、ブラジャーなど女性ものの下着姿で、玄関先で平然と歯を磨く男を住民が目撃していた。
住宅内には街頭テレビが設置され、住民らが集まって見るのが習慣だという。男はドラマには見向きもしないのに、戦争映画だけは食い入るように見つめ、殺害シーンになると興奮しだして独り言をつぶやいていたという。
殺害シーンが映し出されたとき、男がつぶやくのをそばにいた人が耳にしている。
「人肉はうまい。本当にいい味だ」
男は住宅地からの出入りを繰り返していた。最初は数カ月で別の場所に引っ越していったが、昨年に戻ってきた。だが、夜中に叫んだり、長刀を振り回して住民を威嚇したため、住民らの不安を訴える声に追い出された。それがどういうわけか、昨年11月に再び戻ってきたのだ。
伶俐ちゃんの祖母は、玄関先で男が子供たちにあめをあげ、喜ぶ姿を目にしていた。「その中でも特に伶俐ちゃんをかわいがっていたようだった」という。
帝塚山学院大の小田晋教授(犯罪精神医学)は「女児への強烈な性愛が殺害し、解体する行為をへて、食べることで自分のものとして完全に支配するという異常行動に結び付いたのではないか」と分析する。
■相次ぐ児童失跡…事件とのかかわりを指摘する声も
「この事件が初めてのはずがない」「大量の女の子の服は盗んだものと思っていたが、既に殺されてしまった子のものじゃないか」…。住民らは事件後、取材に対し、口々にこう話した。街では約2年前から児童が突然いなくなる事件が相次いでいる。「この子を捜しています」と書いた張り紙も目につくという。
住民の1人は「3カ月前にも3歳の女の子がいなくなった。あの子も食べられてしまったのでは…」と話したという。
警察も連続「食人」事件の疑いもあるとみて、専門捜査チームを立ち上げ、失跡児童宅を回って今回の事件との関連を調べ始めた。
さらには300人近い行方不明児童の父母が住民組織を立ち上げ、「子供を返して」と訴え始めた。伶俐ちゃんの遺族をはじめ、警察や行政の不備を追及する声も高まっているという。
「現代に食人文化が残っているわけもなく、事件は犯人の性向によるところが大きいだろう」と中国事情に詳しいジャーナリストの富坂聰氏は指摘する。
「伶俐ちゃんは誕生日を迎えたばかり。かわいく、賢く活発で、家族は宝のようにかわいがっていました」
近所の住民は取材にこう答えている。事件後、母親は病に倒れたという。
「部屋に入り、孫のズボンや靴を見るだけで耐えられない。全部処分してしまおうと思う」
祖母の声だ。
家宅捜索で、大量の女の子の服が押収された男の自宅前には、ピンクの女の子のくつがぽつんと残されていたが、伶俐ちゃんのものでないことは父親が確認したという。くつの持ち主は依然見つかっていない。
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