転売目的の携帯電話の詐取事件(未遂を含む)が全国で急増し、捜査当局の摘発件数は昨年、11月末現在で1137件と、前年同時期の5・2倍に達していることがわかった。
偽造免許証を提示し、身分を偽って取得する手口が多く、海上自衛隊の海士長(28)が現行犯逮捕されたケースも出ている。振り込め詐欺グループなどがインターネットの「闇サイト」で入手役を募っているとみられ、警察庁は不審な免許証に気づいた携帯電話各社が照会できるシステムを全国の警察本部に設置し、警戒を強めている。
大阪府警の関係者によると、逮捕されたのは、広島県呉市を母港とする訓練支援艦「てんりゅう」の海士長。昨年9月、大阪市内の販売店で本人確認用に偽造免許証を示して携帯電話の購入を申し込んだ。実物より薄いことなどから店員に見破られ、通報された。
海士長は、携帯をだまし取ろうとしたとして詐欺未遂罪などで起訴され、大阪地裁で懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた。確定したため、自衛隊法の規定により失職した。
調べの過程で、「闇サイトの募集を見てやった。報酬で借金を返済するつもりだった」と供述。サイトで知り合った男から、別人の氏名・住所が記載された偽造免許証を受け取っていたことが判明した。
他府県でも、昨夏、兵庫県警に詐欺容疑で逮捕された女が闇サイトでの募集に応じて、京阪神の販売店で計27台を購入し、1台につき5000円の報酬を得ていた。警視庁に逮捕された男も「約100台を詐取した」と供述している。
捜査関係者の話では、こうした購入者は、代金を分割で支払う契約を交わしながら残金を払わず、詐欺罪が適用されるケースが多いという。
同種事件の続発を受けて警察庁は昨年10月、携帯電話各社の担当者に対し、免許証の偽造を見抜く方法を指導したほか、同12月1日から、各社の審査部門と各都道府県警を直通電話で結び、免許証が実物かどうか照会できるようにした。
運用初日、大阪府茨木市の販売店で無職男(24)が提示した免許証が、この照会システムで偽造と判明、茨木署が詐欺未遂容疑で現行犯逮捕した。この男も「闇サイトで1台5000円の報酬をもらう約束だった」と供述したという。
大阪府警幹部は「水際でのチェックは重要。携帯電話販売店を全力でバックアップし、振り込め詐欺など二次犯罪の未然防止につなげたい」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090110-OYT1T00081.htm