2009年01月09日(金) 16時13分
法テラス大阪事務所 被害者ケア精神科医に学べ(産経新聞)
■全国初、全職員に研修プラン
総合的な法律サービスを提供する「日本司法支援センター」(愛称・法テラス)大阪事務所(大阪市北区)は、今月から職員に心的ケアなど精神科医のノウハウを身につけさせる研修を本格導入する。昨年12月から刑事裁判に導入された被害者参加制度に伴い、相談に訪れる犯罪被害者らへの対応に万全を期すのが狙い。法テラスの地方事務所が独自に心的ケアの研修プログラムを始めるのは全国初で、モデルケースとして注目を集めそうだ。
12月11日夜。法テラス大阪事務所で開かれた定例の研修会には職員ら約40人が参加。精神科医で大阪産業大の中川晶教授(医療心理学)を講師に迎えた。
「相手の話を物語として聴くことによって、より理解しやすくなり、コミュニケーションがスムーズになる」。中川教授は、患者の語りに耳を傾けて治療する「ナラティブ」と呼ばれる療法などを紹介した。医療現場だけでなく、接客業や苦情対応の業務など幅広く応用できる療法だという。
法テラスには、多重債務や離婚問題、交通事故の損害賠償など法的トラブルを抱えた利用者が多く訪れる。さまざまな悩みを持つ人たちに適切な機関や制度を助言するなど、最初に対応するのが職員の主な業務となっている。
12月から刑事裁判への被害者参加制度も始まり、今後は被害者・遺族の利用も増加するとみられるため、大阪事務所では職員にも心的ケアの技術が必要と判断。職員からの要望も多く、本格的な研修プログラムを導入することにした。
大阪事務所では平成19年度1年間の電話・窓口対応の総数は約6300件。職員が誠実に対応しているつもりでも、利用者からの「態度や言葉遣いが悪い」とのクレームによって職員を交代したケースなどトラブルも起きているという。
本格導入する心的ケアの研修プログラムは約60人の職員全員が対象。精神科医ら専門家の講習を実施し、民間企業で苦情対応や接客業務を専門に指導するアドバイザーの講習なども取り入れる。法テラス業務にかかわる弁護士を対象にした研修も検討している。
大阪事務所の小寺一矢所長は「心的ケアの技術習得は全国の法テラスで必要になる。大阪での取り組みがモデルケースになり、全国各地の職員が利用者と信頼関係を築き、よりよいサービスを提供できるようにしたい」と話している。
◇
【用語解説】日本司法支援センター(愛称・法テラス)
市民への法律に関する情報やサービスの提供を目的に政府の全額出資で設立され、平成18年10月から業務を開始した。東京の本部を中心に全国50カ所の地方事務所と11カ所の支部などがある。法律トラブル解決のための情報提供や犯罪被害者の支援、生活困窮者へ訴訟費用を援助する民事法律扶助のほか、登録弁護士の中から容疑者や被告の国選弁護人を裁判所に指名、報酬を支払う。被害者を支援する弁護士に関する事務も担当する。
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