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2009年01月09日(金) 22時28分

司法に民意“第3の改革” 検察審査会、強制起訴も可能に  産経新聞

 一般人が不起訴の相当、不当などを決める「検察審査会」が5月21日の裁判員制度開始と同時に大きく変わる。従来、検察を覆すことができなかった審査会の議決に強制起訴が新しく加わる「起訴議決制度」が始まるのだ。昨年12月1日の被害者参加制度開始と合わせ、司法に民意を反映させるための“第3の改革”。検察審査会の権限強化で、司法制度がより身近になるか注目される。(徐暎喜)

■プール事故でも

 刑事事件の容疑者を裁判にかけるよう裁判所に求める「起訴」の権限は、日本では検察官にしか認められていない。検察官が疑いがないと結論づけたり、疑う証拠が十分でないと考えた場合、「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」として不起訴にするほか、起訴するほどの罪ではないと判断すれば「起訴猶予」という形で不起訴にできる。

 ただ、被害を訴えている人などが不起訴処分に納得できない場合、救済策として設けられているのが検察審査会だ。

 検察審査会は平成19年末までに約15万件を審査。平成18年、埼玉県ふじみ野市の市営プールで、小2の女児が吸水口に吸い込まれて死亡した事故で、さいたま地検が起訴猶予としたプール管理業者3人に対し、さいたま検察審査会は「起訴相当」と議決。これを受け、地検が再捜査中だ。

 しかし、現行法では検察は検察審査会の議決に従う必要はなく、検察官が再び起訴する必要がないと判断すれば、不起訴にできる。

■花火は不起訴に

 検察審査会の2度にわたる「起訴相当」の議決にもかかわらず、検察官が不起訴としたケースもある。

 13年に11人が死亡した兵庫県明石市の花火大会転倒事故。神戸地検が、当時の明石署長らを不起訴にしたのに対し、神戸検察審査会が2度も「起訴相当」を議決したが、地検はいずれも不起訴としている。

 こうしたことが続いたため「国民の常識とかけ離れている」との声が相次ぎ、16年に検察審査会法が改正され、裁判員制度開始と同じ5月21日から「起訴議決制度」が新たに導入されることになった。

 この制度は、検察審査会が「起訴相当」と判断した議決に対し、検察官が不起訴にした場合や、特別な事情がないまま3カ月以内に起訴をしなかった場合、検察審査会が再び審査を行う。改めて「起訴すべき」との議決をすれば、容疑者は強制的に起訴されるというものだ。この場合、裁判所が指定した弁護士が“検察官役”となり、起訴の手続きを行うことになる。

■より身近に

 検察官以外が事実上の起訴を行う例外的な制度はこれまでもあった。公務員の職権乱用などの罪を訴えた人が、不起訴処分に不満がある場合、裁判所に対して審判を求める「付審判」請求だ。

 請求を受け、裁判所が付審判を決定すると、この公務員は起訴されたとみなされる。3年に金沢市で男性をけって死亡させた石川県警の巡査が不起訴となったが、遺族が金沢地裁に付審判請求をし、裁判が行われた結果、巡査の有罪が確定した。

 しかし、「付審判」は、検察官と罪を訴えられた人が同じ公務員であるため「身内」をかばうことに歯止めをかける意味を持ち、民意反映が目的の起訴議決制度とは異なる。

 東京第一検察審査会の担当者は「起訴議決制度の導入で、より司法制度が国民にとって身近になってくれれば」と話している。

■検察審査会

 全国の地裁と地裁支部に設けられ、検察官が容疑者を不起訴としたことの是非を問う。不起訴に納得しない被害者などからの申し立てをもとに審査を行い、不起訴が正当と議決すれば「不起訴相当」、不当と議決すれば「不起訴不当」、起訴すべきだと結論づければ「起訴相当」と判断を下す。11人の検察審査員で構成され、裁判員と同様、選挙権を持つ国民からくじで選ばれる。任期は6カ月、半数が3カ月ごとに改選。「不起訴不当」と「起訴相当」の場合、検察官が再捜査。また不起訴の場合も再審査するが、現行法では議決の結果に拘束力はない。

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