2009年01月09日(金) 09時00分
社員も株主も「寝耳に水」の黒字倒産 危険な会社の見分け方はあるのか(MONEYzine)
■取締役の報酬は1200〜2400万円弱だった
先が見えない1年のスタートした。不動産投資を手がける各社にしても同様だ。自ら組成・運営するファンドなどを通して不動産を買収、それに付加価値をつけて売却するという不動産流動化・証券化事業が、急速な市場の冷え込みで行き詰まっていることが主な要因。
金融機関が不動産融資に「超」がつくほど保守的になっていることも苦境に拍車をかけている。上場企業関連ではすでに、リプラス、レイコフ、ランドコムが経営破綻。リプラスはJリート(上場不動産投資信託)のリプラス・レジデンシャル投資法人のスポンサー(現在は交代)でもあっただけに、Jリートへの影響も懸念されるところだ。不動産投資会社にとって、Jリートも不動産の主要売却先の1つである。
リプラスの従業員年間平均給与は635万円。レイコフは605万円。ランドコムは534万円。30歳半ばという平均年齢は別にして、平均勤続年数が2年に満たないことを考えれば、悪くない給与水準だったといっていいだろう。取締役も格別に高給とはいかなかったが、それでも1人当たり平均で1200〜2400万円弱の報酬だった。
経営に深くタッチする経営陣はともかく、社員にとっては「よもや」の事態。3社とも、直近の決算では利益を計上していただけに、なおさら「突然死」に戸惑ったとして不思議ではない。経営破綻、とりわけ黒字倒産のシグナルを察知する方法はないのか——。
表を見てもらいたい。リプラス、レイコフ、ランドコム3社の主な経営指標をまとめたものだ。
【関連写真】社員も株主も「寝耳に水」の黒字倒産 危険な会社の見分け方はあるのか
売上高と経常利益、純利益は損益計算書(PL)から抜き出したもの。手持現金、棚卸資産、有利子負債は貸借対照表、いわゆるバランスシート(BS)に示される。「CF」はキャッシュフローのことである。以下、税理士の池田陽介氏(池田総合会計事務所所長)のアドバイスを中心にまとめてみた。
3社とも売上高を伸ばし、利益を計上していたのは事実。ただし、各社の純利益は数億円から多くても10億円台。それに対して、BSに示されている有利子負債(借金)は、各社それぞれの純利益の20〜40倍規模で、リプラス400億円台、レイコフ200億円弱、ランドコム300億円台だった。
では次に3社の手持現金や不動産投資関連会社の給料を見ていこう。
3社の手持現金については借入実施などで決算時期に増えていたリプラスはともかく、レイコフ9億円、ランドコム18億円と、こちらは極めて小額だった。
これでは借金の返済に何年何十年かかるか、「返せない」と思われても仕方がなかった。金融機関ばかりではなく、私募ファンドへの返済問題を抱えていたことはいうまでもない。
では、経営破綻した3社は、借金を何に使ったのか。主に不動産の購入に資金を回したことは明白。それが棚卸資産の急激な増加にハッキリと示されている。そして、この棚卸資産が回転(売却)さえすれば、会社は継続が可能なのだが、不動産市場の冷え込みでとにかく売れない。
自系列のファンドに売却したくても、ファンドへの出資が集まらずに組成もままならない。棚卸資産を吟味して、「質がよくない」と判断した金融機関は、資金を引き上げる——二重苦、三重苦の中で資金調達が困難になり、経営破綻に追い込まれたわけだ。
■黒字倒産によくある例
ちなみに、何十億円、何百億円と借金を重ねても、基本的にはPLに反映しないもの。会社の借金はBSでの処理が中心になる。借入あるいはその返済は、会社の損益(PL上の損益)とは無関係だということ。押さえておきたいポイントだ。一方で、現金はないのにPLで利益が出ていれば、それに見合う税金を支払わなければならない。黒字倒産によくある例である。
数字を使わないとすれば、キャッシュフロー計算書をチェックするだけでもいい。キャッシュフロー計算書は、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)、投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)、財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)に分かれており、表にしたようにプラスなら「○」、マイナスなら「△」としてみよう。
プラスやマイナスでは実感がわかないということであれば、入ったキャッシュと出て行ったキャッシュで、「入金超=○」「出金超=△」と、とらえればいい。
リプラス、レイコフ、ランドコムの3社はそろって、財務CFは「○」だった。借金など外部から調達した資金の方が、返済を上回っていたということ。投資CFは3社とも「△」。これは、不動産や有価証券の売却による入金よりも、不動産の購入による出金の方が多かったことを意味している。
実は、投資CFが「△」、財務CFが「○」というのは、借金ないしは増資を活用し、将来のさらなる利益を目指して設備投資を急いでいると見て取ることも可能。拡大成長を目指す企業のある種のパターンだといってもいいだろう。
ただし、その場合でも、営業CFが「○」であることが前提。営業CFが「△」は、企業にお金を稼ぎ出すパワーがないとこと。売上による入金が、仕入や営業経費にともなう出金を下回っているということである。リプラスの前期を除いて、3社の営業FCは、これまた「△」で共通していた。
■企業継続の前提は資金力
不動産投資関連会社は、従業員の平均給与が400万円に届かない燦キャピタルマネージメントから、ダヴィンチHDやシンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ、パシフィックHD、ケネディクスなど、1000万円を超すところとまで幅広い。
営業利益率が50%超のセキュアード・キャピタル・ジャパンを含めて、高い専門性を発揮して、会社に利益をもたらせは、社歴は浅くても高収入が可能だということ。それだけに、不動産市場の回復を期待したいところだろうし、体力勝負の1年か——。
いずれにしても、企業継続の前提は資金力。「増収増益」とか「減収減益」といったように、PLの利益に関心を寄せるのも大切だが、営業CFの「○」や「△」には、もっと注目したい。
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(ビジネスリサーチ・ジャパン)
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