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2009年01月08日(木) 14時05分

京セラ“賞与支給式”で全社員に明細手渡しMyNewsJapan

 私は京セラの社員です。先月、うちの事業所の社員(計およそ660人)が、全体朝礼のあと、昼休みの休憩時間中に整列し、所長から1人ずつ手渡しでボーナス明細を受け取る、という奇妙な儀式に参列しました。整列順も刑務所のごとく事前に詳細に決まっています。

 冬のボーナスは、組合の要求どおり、2.6ヶ月の満額回答でした。年間では、およそ5.3ヶ月分ということになります。

 奇妙なのは、賞与明細書を貰うためだけに(現金は口座で振り込まれる)、全社員が膨大なコストをかけ、毎年、夏と冬にこの儀式を行っていることです。

 まず驚くのが、事前の準備を周到に行うこと。まず、「賞与支給式の案内」なるメールが、約2週間前に、人事から各部署に対して届くのです。
 
 そして、当日行われる臨時朝礼の部署別レイアウト図のほか、昼の支給式の具体的な氏名入り整列順まで記された詳細なシートも配布されます。事前に出欠確認までとり、つつがなく儀式が進むよう、万全を尽くします。並び順が1人でも変わると、「整列位置変更のお知らせ」がきます。ほとんど刑務所です。

 なぜ社内向けの活動にこれほどの労力を費やすのかは不明ですが、京セラでは全社的に昔から行われているようです。

 そして、12月11日の支給日。まず、いつもの朝礼とは別に「臨時朝礼」がありました。相変わらず、始業時間の5分前に整列することが求められます。各部署ごとに、整列位置も決められています。

 そして、川村誠社長からのメッセージを、大東事業所長が代読します。「今期は非常に業績が厳しい。その中で、組合の要求通りに2.6ヶ月を満額回答した。ボーナスを貰えることに感謝しなさい。そして、今日は帰宅したら、家族と賞与を貰えることの喜びを共有しましょう」

 業績が厳しいのは、経営陣の能力の無さではないのか?と思っている人は多いはずですが、この会社では、そのことには誰も言及しないことになっています。それにしても、全社員を集めて朝礼するには当然、人件費というコストが掛かっている。業績が厳しいなら、真っ先にカットすべきなのは朝礼ではないのでしょうか。

 支給式のほうは、お昼の休憩時間に、部署ごと(100人程度)に分かれて実施されます。労務時間外なのですが、なぜか強制出席が当然となっているのも疑問です。

 会場となる会議室には、やはり5分前に来て整列していなければいけません。部・課ごとに整列位置、順番が決まっており、更に、各人の整列順序も決められています。まるで小学校か軍隊のようです。

 所要10分の儀式ですが、時間になると、順番に名前が呼ばれ、前にいる事業所長(総務部長よりちょっと上くらいの人)のところに行き、賞与明細を普通に手渡しで貰います。そして、貰ったら、会場の出口に向かい、出て行きます。たったそれだけです。

 私が今年度からこの儀式に参列することになったのは、三洋電機の携帯電話事業が会社分割され京セラに事業譲渡されたためです。儀式の出席者のうち大半は、元三洋電機社員でした。

 三洋時代は一応、目標設定の制度があり、目標達成率などの査定によってボーナスの額が変わる仕組みだったのですが、新会社になってからは不透明になりました。今回、賞与の支給に関して、上司(会社側)から個人の業績や成果に関するコメントは一切なしでした。賞与明細にも、そのようなことは記載されていません。

 ですが、同じ基本給でも、どういうわけか個人によって支給額に差があり、全員が2.6ヶ月ではありません。業務成果に応じているのでしょうが、上司から個人へのフィードバックが何もないために評価プロセスは闇の中で、納得性は低いです。

 この賞与支給式イベントには、大勢の人たちが時間と労力、人件費をかけています。紙の明細も、ソニーや日本IBMをはじめ、廃止してイントラ上から確認するのが主流となりつつあります。それらコストを削ってボーナスに上乗せした方が、京セラプロパーで洗脳されていない一般的なサラリーマンは喜ぶでしょう。

 確かに成果主義・個人主義的に考えると無駄なイベントではありますが、京セラのような社会主義・全体主義的な組織において、ボーナスが貰える感謝の念を植え付け、組織としての一体感を醸成するためには、重要なイベントなのかも知れません。それが京セラの強さなのかとも思います。

(京セラ中堅社員)

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