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2009年01月08日(木) 02時33分

<呉服過量販売>信販、5億円の債権放棄 愛染蔵被害で和解毎日新聞

 破綻(はたん)した呉服販売大手「愛染蔵(あぜくら)」(大阪市)による呉服過量販売商法を巡り、大手信販約10社が計約150人のクレジット契約について、総額約5億円の債権を全額放棄したうえ解決金計約1億円を支払うことで、被害弁護団と訴訟外で和解したことが分かった。被害弁護団は春ごろまでに全面決着に持ち込み解決金を被害者に分配する方針だ。

 直接の販売業者ではない信販会社が大規模な消費者被害の救済に応じるのは異例で、支払い能力を超える「過剰与信」の責任を事実上認めたともいえる。約3年前に社会問題化し、割賦販売法改正のきっかけにもなった同商法の被害救済が大きく前進する。

 愛染蔵被害対策弁護団(団長・木村達也弁護士)が信販各社と約2年にわたり個別交渉を続けてきた。最近、ほぼすべての信販会社と合意に達した。

 約150人は高齢女性が中心で、いずれも短期間に大量の着物などをクレジット契約で購入させられ、信販各社への支払い済み代金は約7億5000万円に上っていた。

 弁護団は「信販会社は愛染蔵の店舗に社員を常駐させたり、短期間に1人数百万〜数千万円ものクレジット契約に応じるなど、悪質商法に加担した」と主張。信販各社に残債務計約5億円の不存在の確認と、支払い済み代金のうち信販会社の手数料分(約10〜20%)返還を求めてきた。

 関係者によると、信販各社は当初、契約の正当性を訴え争う姿勢だった。しかし08年、割賦販売法が改正され、買い主の支払い能力を調査する義務や過剰与信の禁止など信販会社に対する規制が強化されたこともあり、信販会社側が次々と譲歩してきたという。法律上は信販会社に帰属する商品の所有権もすべて放棄した。

 愛染蔵は呉服過量販売商法が問題化したため、06年3月に経営破綻。その後、当時の社長が自殺した。

 大阪弁護士会の弁護士約20人が結成した被害対策弁護団には1000人近くから被害相談があった。弁護団は短期間に高額のクレジット契約を繰り返し結んでいた約150人に絞り、信販会社に被害回復を求めてきた。【前田幹夫】

【ことば】呉服過量販売商法

 クレジット契約で高額の着物や貴金属を短期間のうちに次々と購入させる商法。食事や旅行の「無料特典」などで客を展示会に誘い、複数の従業員が長時間取り囲んで圧力をかけたり、商品価値を偽って強引に契約を結ばせる。被害者は主に中高年の女性で、数百万〜数千万円の負債を抱え支払いができなくなる例が多い。支払い能力を超えるクレジット契約に応じてきた信販会社の「過剰与信」も問題視された。

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