2009年01月08日(木) 21時07分
「命の大切さ伝えたい」阪神大震災の遺族代表の田中さん(産経新聞)
阪神大震災から丸14年となる今月17日に開かれる「神戸市震災14年追悼の集い」で、遺族代表として追悼の言葉を述べる神戸市属託職員、田中千春さん(53)が8日、市役所で会見し、「生まれてくる子供、震災を経験していない子供たちに、命の大切さを伝えたい」と語った。
田中さんは東灘区のマンションで被災。家族は無事だったが、同区内の文化住宅で一人暮らしをしていた母の川野文子さん=当時(62)=が建物の下敷きになって亡くなった。遺体を運ぶ手段がなく、駐車場にあった畳に寝かせた。その後、周辺に避難指示が出たため、数日間母を一人にした。そのことがずっと気にかかり、後々まで罪悪感を引きずった。
文子さんは早くに夫を亡くし、女手一つで子供3人を育てた。「けして泣き顔を見せず、太陽のように明るい人でした」。地震の1週間前、文子さんが田中さんの自宅を訪れたのが最後になった。「子供もみんな家庭を持ち、思い残すことはない」。こう話す母に「そんなこといわんと、長生きせんといかんよ」と言った。
地震後、毎年「1月」は夜眠れないなど不安定になった。それが平成9年に仮設住宅や復興住宅を訪問する仕事を始め、少しずつ心境が変化した。さまざまな被災者と向き合うなかで、自身の被災体験とも向き合えるようになった。
田中さんは、これまで被災体験をあまり人に話してこなかった。「口に出すと、いろんな思いがあふれ出してしまうのが怖かった」。しかし、時の流れのなかで生活も徐々に落ち着き、「何かの形で伝えられたら」という気持ちから今回、遺族代表を引き受けた。
「命ってすごく大切だということを体験した。たった1つしかない命を粗末にせず、大切にしてほしいと伝えたいです」
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