2009年01月07日(水) 18時40分
【ドラマ】「相棒 元日スペシャル」新しい相棒(ツカサネット新聞)
テレビドラマ「相棒 元日スペシャル ノアの方舟」が2009年1月1日にテレビ朝日系列で放送された。「相棒」は紅茶好きの知性派変人・杉下右京(水谷豊)が活躍する人気刑事ドラマである。2008年5月1日に公開された映画「相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」も大ヒットした。
相棒はタイトルの通り、杉下の相棒になる熱血漢の亀山薫(寺脇康文)との対照的なコンビが魅力であった。しかし、その亀山は「亀山薫 最後の事件」(2008年12月17日放送)で警視庁を退職する。一人だけの特命係となった杉下による最初の放送が今回の元日スペシャルである。
今回の放送はスペシャル番組に相応しい、どんでん返しの連続であった。地球温暖化阻止を提唱するエコテロ集団「ジャッカロープ」によるテロによって物語は幕を開ける。しかし、テロの背後には環境問題に乗じて私腹を肥やす政官業の癒着があることが明かされる。さらに約30年前の公害問題まで絡んでくる。前半に登場したヒントが後半の推理に活かされており、長丁場ながら最初から観ていなければ楽しめない工夫を凝らしていた。
米国同時多発テロ以降、「テロとの戦い」が錦の御旗になった感がある。テロとの戦いのためならば人権侵害も正当化できるという危険な傾向が見られる。これに対し、本番組が極悪非道のテロリストを潰せば平和になるという類の単純な価値観に汚染されていないことは評価できる。一方で過去の公害問題への復讐という動機は積極的には「相棒」らしい社会派、消極的にはマンネリ化と評価が分かれるところであろう。
注目されたのは杉下の相棒であるが、今回は姉川聖子・法務省官房長補佐官(田畑智子)である。これも「相棒=亀山」の印象が強いために好き嫌いが分かれるところである。法務省キャリアの姉川は、猪突猛進型で「人材の墓場」である特命係に押しやられた亀山とは対照的な存在である。
姉川は肉体派ではなく、頭脳派的な位置付けになる筈だが、推理力の冴え渡る杉下と組む以上、頭脳面ではなく、足で貢献することになるのは番組の宿命である。しかし、捜査経験のない姉川にできることは限られている。そのため、推理面では相棒というよりも視聴者に説明するためのワトソン的存在であった。それでも最後には犯人にタックルまでするようになった。
性格面では姉川は秘めた情熱を有する人物である。不法投棄の国家賠償訴訟では住民の救済を願い、被害住民の立場に立つ法務大臣を守ろうとする。この点で亀山と共通する熱い人間である。結局のところ、杉下と好対照をなす相棒となるには亀山的にならざるを得ない。姉川のように法務省キャリアという亀山とは対照的な設定にしたとしても、性格や行動は亀山的でないと「相棒」としては座りが悪い。
しかし、新しい相棒が小亀山になってしまうと、マンネリ打破のリニューアルにならない。既存の亀山ファンからは「亀山の方が良かった」とブーイングされるであろう。姉川は法務省に戻ることになり、杉下の新たな相棒は不明なままである。どのような人物が新しい相棒になるのか、しばらく「相棒」から目が離せない。
(記者:林田 力)
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