2009年01月07日(水) 21時34分
<金融政策>米国、量的緩和の効果に半信半疑 手探り続く(毎日新聞)
金融危機の深刻化で日米の金融政策が転換点を迎えた。日銀と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げがほぼ限界に達したためだ。日米とも今後は資金供給拡大を金融緩和の軸に据える方針だが、「未踏の領域」に突入するだけに、政策当局は手探りが続きそうだ。【斉藤望】
★非伝統的手段
「非伝統的な政策を使っても、経済見通しはしばらく弱い状態が続くだろう」。FRBは先月15、16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で事実上のゼロ金利と初の量的緩和政策の移行を決め、その議事要旨を6日公表したが、FOMCの議論では量的緩和の効果に確信を持てない当局の姿が浮かんだ。
「非伝統的な政策」とは、金利の上げ下げが中央銀行の伝統的な金融政策であるのに対し、金利以外の政策手段を用いることを意味し、この場合は量的緩和を指す。
FRBが乗り出したのは、住宅ローンや自動車ローンの債権を組み込んだ証券化商品の買い取り。冷え込んでいる住宅市場や自動車市場に直接資金を流し込んで、テコ入れを図る。前例のない措置に踏み切ったのだが、それでも政策効果を測りかねているところに米景気後退の根深さをうかがわせる。
量的緩和の手法をめぐっても当局の迷いがにじんだ。先月のFOMCで一部の委員は、日銀が過去に採用したタイプの量的緩和の導入を求めた。日銀の量的緩和は金融機関を通じた間接的な資金供給。FOMCは最終的に「銀行の資金仲介機能が損なわれており、景気への効果が期待できない」との意見が大勢を占め、日銀型の量的緩和は見送られた。
★副作用
日銀は企業が資金調達のために発行するコマーシャルペーパー(CP)の買い取りを決めた。従来は売り戻し条件付きでCPを買い取ってきたが、今回は完全に買い切るため、企業の資金繰り改善が期待される。
また、資金供給の担保となるCPや社債の基準を緩和し、8日からは担保の範囲内なら無制限で低利の資金を供給する。日米とも中央銀行が市場に資金を流し、信用収縮による資金の目詰まりを緩和する狙いだ。
だが、新たな緩和策は副作用もはらむ。日銀やFRBは発行する通貨の信用の裏付けとして、通常は国債など安全な資産を持つ。だが、CPや証券化商品など焦げ付くリスクのある資産が増えれば、中央銀行に損失が発生し、通貨の信用が揺らぐ懸念を抱え込む。
FRBの資産は経営難の金融機関への緊急融資などで既に膨張し、昨年12月10日時点は約2兆2000億ドル(約200兆円)と9月の約2.5倍に達した。量的緩和が今後本格化すると「3兆ドル超えは確実」とみられ、「ドル売り圧力が強まり、金融市場を一段と不安定にしかねない」との指摘もある。
また、日銀はCPに続いて社債の買い取りや株式を担保とした資金供給などを今後の検討課題としている。だが、日銀の白川方明(まさあき)総裁はCP買い取りを「異例中の異例」と指摘。日銀には「短期資金のCPに比べ、長期資金の社債は焦げ付くリスクも高まる」との意見があり、慎重に検討する構えだ。
◇量的緩和政策
金融政策の目標を金利水準ではなく、市場に供給する資金量に置いて、金融緩和を図る手法。日銀はデフレ懸念や金融システム不安が高まった01年3月〜06年3月に実施した。金融機関が日銀に預ける資金量(当座預金残高)を目標(最大時は30兆〜35兆円)とし、金融機関から手形や国債を積極的に買い入れ、金融機関に大量の資金を供給した。今回の資金供給拡大は、資金量を目標にしておらず、白川総裁は量的緩和の復活を否定している。
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