2009年01月05日(月) 14時49分
「怖くて運転できない」相次ぐ凶行にタクシー運転手が悲鳴(産経新聞)
三度、“密室”の車内での凶行が繰り返された。仕事始めの5日早朝、大阪府松原市でタクシー運転手、野澤俊樹さん(61)が首を切られ、売上金を奪われた強盗殺人未遂事件。「これでは安心して運転できない」。昨年末に兵庫、大阪両府県でタクシー運転手を狙った強盗殺人事件が相次いだ中での犯行に、運転手からは不安の声が上がった。
野澤さんが勤務していた大阪市東淀川区のタクシー会社「国際興業大阪」には、早朝から報道陣が詰めかけた。
同社によると、野澤さんは4日午前9時から乗務を開始。翌5日午前4時ごろまでに、所属する同社の我孫子営業所へ入庫予定だった。午前5時ごろに、近くを通った同僚が野澤さんのタクシーのメーターが倒れたままになっているのを発見したという。
同社のタクシーはメーターを倒すと、自動的に乗車地などの日報を記録するシステム。日報によると、野澤さんは事件発生まで34回の乗務をこなし、最後の客を「大阪市平野区喜連2」で乗せ、「松原市三宅中8」が降車地となっていた。この日は、車内には少なくとも6万円の売り上げがあったという。
野澤さんは平成9年7月に入社。1回の乗務で平均5万〜6万円を売り上げるなど営業成績は優秀で、温厚な人柄から同僚にも慕われているという。
野澤さんの同僚の運転手は「兵庫で事件が起きたときも、東大阪で起きたときも気をつけなければとは思っていたが、まさか同僚が襲われるとは」と驚いた様子。この同僚は3年前にタクシー強盗の被害に遭い、数万円を奪われたという。「首筋にカッターナイフを突きつけられ、本当に動転した。私の場合、けがはせずにすんだが、野澤さんは最初、意識がないと聞いた。助かってくれればいいのだが」と安否を気遣った。
同社の迫田謙典副社長は「タクシーをねらった強盗が増えていたので、点呼などで注意喚起していた最中だった。車内にカメラを設置することも検討したい」と話した。
野澤さんが襲われた現場周辺は金属加工会社などの工場が立ち並び、5日が仕事始め。近くのねじ製造会社の従業員、今井弘樹さん(45)は「初出勤なのに工場周辺は警察官ばかり。不況で空き工場が出てきてガラクタが散乱するところもあり、治安が悪化するのではと心配していた」。
また、たばこ店経営の女性は「現場周辺は日中はトラックが行き交うが、夜明け前には人通りも少なかったはず。東大阪市でもタクシーが狙われた事件があったが、早く解決してほしい」と不安を募らせていた。
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「不審な客がいても、降りろとはいえない。会社は防犯カメラの設置など、もっと対策をとってほしい」。松原市付近で深夜もよく営業するというタクシー運転手の男性(57)は顔をこわばらせた。野澤俊樹さんが襲われた現場はよく客を送る場所だといい、「恐ろしい」とショックを隠せない様子だった。
東大阪市の事件で運転手が殺害された商都交通(大阪市中央区)は「二度と事件が起こらないようにと願っていたのに」と絶句。
大阪府内のタクシー会社では、事件を受けて非常時の連絡体制を確認。運転手に「深追いせず、車を捨ててでも安全を守れ」と呼びかけた。運転手からは、防犯カメラや運転席と後部座席との間の防犯板の設置要求が強まっているという。ただ「車内は密室になるため、絶対の対策は難しい」と頭を悩ませる。
別のタクシー会社では、事件を契機に防犯板の設置を検討し始めた。「客に不快に思われたり、声が伝わらなければ逆にトラブルのもとにもなるが、そんなことを言っていられないほど運転手に動揺が広がっている」という。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090105-00000545-san-soci