5日は多くの企業や官庁で「仕事始め」を迎えたが、不況のあおりで仕事を失った“雇用難民”たちは向かう職場もなく、この日に業務を開始した各地のハローワークには朝一番から大勢の人が並んだ。
業績悪化に苦しむ企業の経営者らも、「景気回復」を願って神頼みの列を作った。
◆派遣◆
東京・新宿区の「ハローワーク新宿」では、業務開始の午前8時30分にはすでに、約30人が順番待ちで並んだ。
「会社にはまだ体力が残っているはずなのに、解雇しやすい派遣社員から切っている。求人状況が悪いので、地域にこだわっていられない」。愛知県内の自動車工場で働く男性派遣社員(42)は5月までの派遣契約が2月末に打ち切られるため、帰省先の北海道から愛知に戻る途中に同ハローワークに立ち寄ったという。
業務開始前に約20人が列を作った神奈川県藤沢市のハローワーク藤沢。昨年11月まで派遣社員として警備の仕事をしていた同市の男性(39)は、「今年の仕事始めは、ハローワークに来ることになってしまった」とこぼした。
昨秋、大阪府吹田市にある出荷前のパソコンを梱包(こんぽう)する工場で「派遣切り」にあった男性(40)は、大阪市北区のハローワーク梅田を訪れた。「えり好みは出来ないが、正社員の仕事に就くのが今年の最大の目標」と、求人情報検索用パソコンの画面をにらんでいた。
◆経営者◆
商売繁盛の御利益で知られる東京・千代田区の神田明神には、早朝からスーツ姿のビジネスマンや企業経営者らが続々と訪れた。午前11時頃になると、境内は参拝客で身動きできないほどに。
同神社によると、5日の参拝予約は約890社で、例年より1割ほど多いという。
約40年間、同神社で年始の参拝を続けているという同区の非鉄金属卸売会社「千代田金属」の唐木輝昭社長(66)は、「こんなに人が多いのは久しぶり。みんな商売の神様にあやかりたいんでしょう」と驚く。
約100人の従業員を抱える同区の繊維織物販売会社「加藤」の小沢健三郎会長(74)は、「何とか不況を吹き飛ばし、景気を回復してほしい」と願を掛けた。昨秋から注文が減り始めたが、「きついけど、正社員なら努力して働いてくれる」と、リストラは考えていない。
http://www.yomiuri.co.jp/feature/20081209-206556/news/20090105-OYT1T00413.htm