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2009年01月05日(月) 00時00分

「安定した仕事を」 派遣村500人 都内4施設へ読売新聞


年越し派遣村から生活保護申請などに向かう人たち(5日午前、東京・霞が関で)

 東京・日比谷公園に先月31日から開設されていた「年越し派遣村」では5日、宿泊場所となっていた厚生労働省の講堂で、午前10時前から最後の集会が行われた。村長を務めるNPO法人事務局長の湯浅誠さんが「今日から次の生活のスタートです。大変ですが頑張って下さい」とあいさつすると拍手が起きた。

 先月まで日雇い派遣で生活費を稼ぎ、ネットカフェなどで寝泊まりしてきたという男性(40)は「派遣村で過ごし、一人ではないことに気づかされた。不安はあるが、住居と少しでも安定した仕事を見つけたい」と話していた。

 同村実行委によると、4日夜に講堂や同公園に泊まった元派遣社員らは489人。一同は集会後、12日までの受け入れ先となった中央区などの計4施設への引っ越し作業を開始。一部は正午過ぎから国会へ向け、デモ行進した。

 派遣村から約230人分の生活保護申請がファクスで寄せられた千代田区では、5日午前、職員ら約50人が対応に追われた。区庁舎1階に生活保護の申請や健康相談の窓口を特設、庁舎前では防災用の保存食約300食の炊き出しを行った。この日は申請者のうち75人が正午前に区庁舎に向かい、手続きを進めた。

派遣社員が鉄道自殺 宇都宮線の踏切

 4日午後11時半頃、埼玉県蓮田市上のJR宇都宮線黒浜新道踏切で、線路内に歩いて入った同市の男性派遣社員(52)が、湘南新宿ライン逗子発小金井行き普通電車(10両編成)にはねられ即死した。

 岩槻署は、男性が線路上に立っていたことなどから、自殺とみて調べている。発表によると、男性は昨年5月、同市内で経営していた居酒屋を廃業。派遣社員として仕出し弁当の調理をしていたが、最近になって「生きていくのが嫌になった」と周囲に漏らしていたという。男性は、高校1年と中学1年の2人の息子と暮らしていた。

 この事故で、宇都宮線など計6本で最大1時間3分の遅れが生じ、約4700人に影響した。

祝えぬ船出 工場なお休業「初荷式」中止…

大発会を終え、晴れ着姿で仕事をする東証社員ら(5日午前、東証で)=林陽一撮影

 昨年来の不況で働く先の見つからない人、長年続けてきた賀詞交換会を取りやめた企業——。多くの人が、明日の暮らしへの不安を抱きながら5日の「仕事始め」を迎えた。

■「開店休業」

 期間従業員らの契約が大量に解除された大分市の東芝大分工場は一部の生産ラインを除き、14日まで22日間の休業が続いている。5、6日の2日間は、すべての生産ラインが停止されたため、工場の駐車場はがら空きの状態だ。

 工場近くのコンビニの店員は「いつもの仕事始めなら、もっとお客さんが多いんですが……」。弁当やサンドイッチは休業を見越して品数が少なく、立ち寄る人もまばらだった。

 昨年末に派遣労働者820人を削減した「いすゞ自動車」は、約40年間続けていた賀詞交換会を取りやめた。広報部によると、取りやめは、人員削減が進められた昨年12月に急きょ決められた。広報担当者は「派遣労働者の削減などもあり、様々なことを考慮した」と漏らした。

 6日から今年の操業を始める「マツダ」は広島市などの本社工場と山口県防府市の防府工場で、初荷の自動車を飾り付けて送り出す、新春恒例の「初荷歓送式」を今年以降取りやめる。マツダグローバル広報企画部は「生産台数の見直しなど、会社を取り巻く経済環境悪化を考慮して祝賀ムードを自粛した」としている。

■求職者の列

 千葉市のハローワーク千葉には5日午前8時過ぎから、40人余の行列ができた。千葉県市原市出身の男性(37)は先月初旬、登録していた派遣会社から契約を打ち切られた。クリスマスの25日に同僚15人と一斉に寮を追い出され、ネットカフェやコンビニの駐車場などで夜を明かしてきた。「手持ちの現金もあと2、3日。携帯電話の料金も今月は払えないかもしれない。連絡をとる手段もなくなってしまう」と窮状を訴えた。

 各地のハローワークでは、職員が早朝に出勤して相談者の対応にあたるなどしたが、浜松市のハローワーク浜松の職員は「相談者が開庁を待っていた仕事始めは初めて」と驚いていた。

■株価は一息

 新年最初の株取引となる大発会が行われた東京証券取引所では、日経平均株価が約2か月ぶりに9000円台を回復、関係者からは安堵(あんど)の声が上がった。

 振り袖姿の女性社員が華やかなムードを演出する中、取引所内の電光掲示板には午前9時の取引開始から、次々と買い注文を示す赤い表示が流れた。証券会社の役員(60)は「ニューヨークも上がったし、ご祝儀相場だ」とほおをゆるませたが、「明日以降はどうなるかわからない」と表情を引き締めた。

 東京都足立区の個人投資家、石山金治さん(75)も「株価の回復を気長に待ちます」。栃木県佐野市の会社員の男性(38)は「雇用が減ると個人消費も低迷し、株価も下がる。政府は雇用対策をしっかりやってほしい」と注文していた。

マグロ初競り 1本963万円築地

真剣な表情でマグロを選ぶ卸業者ら(5日午前4時56分、東京・中央区の築地市場で)

 東京・築地の中央卸売市場で5日早朝、今年の初競りが行われた。生鮮マグロの卸売場に並んだのは、昨年より249本多い728本。午前5時すぎ、仲買人らが「手締め」を行って豊漁と商売繁盛を願った後、次々と目当てのマグロを競り落としていった。

 毎年高値が付く青森・大間産の本マグロは、しけで水揚げが少なかったため、入荷はわずか3本。最高値は1本963万円(128・4キロ)で、過去10年では2001年の2020万円に次ぐ高値を記録した。1キロあたりでは7万5000円となり、前年の3・4倍にはね上がった。最高値のマグロを競り落としたのは仲卸業者「やま幸」で、香港と日本で店舗を展開するすし店と、東京・銀座のすし店が共同購入した。香港のすし店を経営するリッキー・チェーンさん(41)は「不景気だけに、縁起のいい初競りで一番のマグロを買いたかった」と話していた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/yuragu/yuragu090105_02.htm