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2009年01月04日(日) 22時09分

大衆薬のネット販売6月禁止へ産経新聞

 インターネットを利用した、風邪薬など大半の一般用医薬品(大衆薬)の販売が今年6月からできなくなる見通しとなった。厚生労働省が改正薬事法の施行にあたって省令を改正し、販売規制を強める方針を固めたからだ。「副作用」を心配する過去の薬害被害者らが規制を後押しする一方、ネット業者や政府の規制改革会議は「消費者が不便になる」と猛反発するなど、規制に対する動きが活発化している。(神庭芳久)

 ■■副作用を懸念

 現行の薬事法にはネット販売禁止の規定はなく、販売は「事実上黙認」されてきた。これまで厚労省は通知などで、販売は副作用の危険が低いビタミン剤といった商品に限るよう求めてきたが、守られていないことも少なくない。

 全国薬害被害者団体連絡協議会の間宮清副代表世話人が「実質的に野放し」と批判するなど、副作用を懸念する声が出ている。

 厚労省も「対面販売」というプロセスが省かれるネット販売では薬が安全、適正に使用されない可能性があるという立場だ。昨年9月には省令案を出し、大衆薬を副作用の危険度から3分類し、ネット販売ができる薬を低リスクの商品に限る方針を打ち出した。

 日本薬剤師会など9団体や薬害被害者団体もネットでは対面販売と同様の安全性確保は難しいとして、販売の全面禁止を主張。ネットで大量購入した鎮静剤で自殺を図った末、重い後遺症が残った少年の父親が昨年12月に厚労省で会見し、こう訴えた。「ネットで薬を大量に買えなかったら、こんなことは起きなかった。薬はネット販売になじまない」

 ■■300億円市場

 しかし、ネット販売で業績を伸ばしてきた薬局などからは規制強化に反対の声が噴出している。昨年12月には約40のネット販売薬局でつくる「日本オンラインドラッグ協会」メンバーらが舛添要一厚労相に販売規制反対を訴えた。車いすの男性は「一部の薬でも買えなくなったら不便。改正を見直してもらいたい」と嘆願した。

 協会によると、加盟社対象の調査で、改正で禁止になる風邪薬など「2類」の医薬品は、ネット売り上げ全体の約6割を占めた。店頭よりネットの売り上げが多い社もあった。

 協会の後藤玄利理事長は「業界の死活問題。チェーン店進出で、ネットに活路を見いだした地方の中小薬局への打撃は特に大きい」と訴える。

 政府の規制改革会議も、厚労省の規制強化には渋い顔だ。改革会議では大衆薬のネット市場を年間約300億円以上と見積もり、さらに拡大傾向にあるとみる。議長の草刈隆郎日本郵船会長は「消費者の利便性を阻害する」と話す。

 ■■高いリスク

 厚労省はこれまでのところ、今年6月に規制強化する方針だ。ただ、「ネット業者などから安全確保のための具体案が出た場合」には議論の余地を残した。

 日本オンラインドラッグ協会は購入者に氏名などの開示を求め、電子メールを使って購入者の状態を把握するといった自主指針を策定し、改訂を重ねている。

 だが、厚労省のある担当者は「ネットではニセ薬が氾濫(はんらん)するなど薬のネット販売を認める危険は大きい」と現状を指摘している。

     ◇

 改正薬事法 平成18年6月成立。処方箋なしで買える一般用医薬品(大衆薬)の販売制度の見直しが柱で、薬剤師らによる対面販売の原則を掲げた。大衆薬を副作用の危険度に応じて3つに分類し、リスクの高い1類医薬品は販売には薬剤師の説明を義務化。比較的リスクが低い2類、3類の医薬品は、都道府県実施の試験に通り、新設された「登録販売者」の資格を持つ人がいれば、販売できるよう規制を緩和した。

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