2009年01月04日(日) 20時31分
イスラエル、ハマスの基盤破壊を狙う?(産経新聞)
【カイロ=村上大介】イスラム原理主義組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区への地上侵攻に踏み切ったイスラエルの狙いは、ハマスのロケット弾攻撃の阻止にとどまらず、ハマスの支配基盤を徹底的に崩すことにあるとの見方が上がっている。だが、思惑とは裏腹に、イスラエルの攻撃に対しては、アラブ・イスラム世界を中心に「大虐殺」との反発がわき起こり、イスラエルや米国がてこ入れを図りたい穏健派のアッバス・パレスチナ自治政府議長の立場を逆に弱めることにつながっている。停戦を求める国際社会の圧力も今後、次第に強まるとみられ、イスラエルが作戦目標を達成できるかのは不透明だ。
4日付のイスラエル有力紙イディオト・アハロノトの分析記事によると、イスラエル軍の地上作戦は2段階が想定されており、第1段階は数日間続き、ハマスにショックを与えて軍事的優位を保ちながら、国際社会の仲介による停戦交渉を有利に進める狙いという。
イスラエルは、(1)ハマスによるロケット弾蓄積などの兵器入手を完全に阻止するメカニズム(2)ハマスが停戦を破った場合の国際社会による制裁措置−などを具体的に停戦合意に盛り込むよう主張するとみられる。
しかし、ハマスがこうした条件を拒否するのは明らかであり、その場合、イスラエルはさらに地上作戦を激化させざるを得なくなる。その段階でのイスラエルの軍事的目標は不明だが、市街戦でガザの民間人にこれまで以上に多数の死者が出始めた場合、鈍い反応しか示していない国際社会からも無条件攻撃停止を求める声が高まることが予想される。
イスラエル側には、国際社会は「ハマスを弱体化させるためにイスラエルに時間的猶予を与えようとしている」(イスラエル紙ハアレツ電子版)との読みもあり、ハマスに時間の許す限り軍事的な打撃を与えることを狙っているとの指摘もある。
イスラエルでは2月に総選挙を控えており、今回の作戦に踏み切った第1与党の中道右派カディマと第2与党の中道左派・労働党の命運は、ハマスのロケット弾を抑えてみせることが握っている。これに失敗すれば、総選挙ではカディマと支持率で拮抗(きつこう)する右派強硬派リクードの台頭を許すことになる。だが、イスラエル軍の圧倒的な軍事力の優位性を今後の停戦合意に反映させるのか、道筋はまったくみえない。
一方、ハマスは、イスラエル軍との地上戦を続けることで、アラブ・イスラム社会を中心とした世論の支持を引きつけることができる。イスラエルを市街戦に引き込めば、パレスチナ人の被害はさらに増え、イスラエルを放置する米国と、米国の支持を受けるアッバス自治政府議長率いるファタハに対するパレスチナ社会の反感は増幅する。
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