2009年01月04日(日) 19時45分
「火天の城」西田敏行 安土築城の壮絶ドラマ(産経新聞)
■大工の総棟梁 岡部又右衛門の半生
「山ひとつを切り開いて城を造れ。五重の天守閣を建てろ」。織田信長が命じた、無謀ともいえる築城計画に命を懸けた大工の総棟梁(とうりょう)、岡部又右衛門の半生を描いた大作「火天の城」(田中光敏監督)が今年秋の公開に向けて製作中だ。又右衛門を演じる西田敏行は「知識と知恵で常識を覆す建築物を造り上げた男。人望も厚く、そのリーダーシップは現代にも通じるはず」と語る。戦国時代を再現した撮影現場を取材した。
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安土城は天正4(1576)年、現在の滋賀県安土町で着工、3年後、五重の天守閣が完成する。総工費は現在の価値に換算すると約1000億円以上といわれる。その陣頭指揮をしたのが宮番匠の岡部又右衛門だ。
壮大な天守閣のセットを任されたのは市川崑監督らと組んできたベテラン、西岡善信美術監督。総製作費15億円を投じ、壮大な天守閣が組み上がる建築工程などを再現し、スケール感あふれる時代絵巻を展開させる。
ロケ地での撮影も徹底してこだわり、又右衛門に信長(椎名桔平)が安土城の築城計画を打ち明けるシーンの撮影が、大阪府東大阪市・鴻池新田の元庄屋だった重文施設を使用して行われた。
信長「安土の山ひとつを城にする。天守は五重。建てられるか?」
又右衛門「五重の天守など見たことも聞いたこともございませぬ…」
信長「できぬのか!」
又右衛門「建てましょう!」
前代未聞の築城計画が動き出す歴史的場面は緊張感漂う現場で撮影された。
「信長の命令に初めは狼狽(ろうばい)するが、自分の背後に控える部下の大工たちの視線を感じ“こんな親方でいいか、ならばついてこい”という強さを表現したかったんです」と西田は説明した。「現代でいうと首相のような立場かな。今の時代にも通じる“強い指導者の背中”を見せることができれば…」
テレビドラマ初のレギュラー役が、NHKの「北の家族」(昭和48年)で演じた“大工の源さん”だったことに触れ、「還暦を過ぎて、また大工役がめぐってきた。何か因縁を感じますね」と笑う。
秀吉、家康の2役はすでに演じているが、「なぜ信長役のオファーだけ来ないのか? きっと自分の中に信長らしさがないからでしょうね」と苦笑いする。
「戦国時代を描くのに“チャンバラシーン”がないんです。破壊ではなく創造のすごみ−を伝えたい。重厚な人間ドラマをお見せしますよ」と語気を強めた。
他に又右衛門の妻、田鶴を大竹しのぶ、娘の凜を福田沙紀が演じる。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090104-00000549-san-ent