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2009年01月04日(日) 19時21分

「犯人は近くにいる」執念の捜査続く 京都精華大生殺害事件産経新聞

 漫画家になる夢を抱いていた青年の未来を一瞬にして奪った凶行から、間もなく2年の月日がたつ。京都市左京区の路上で平成19年1月、京都精華大学マンガ学部1年、千葉大作さん=当時(20)、仙台市出身=が殺害された事件。京都府警の捜査は長期化しているが、誠実な人柄で周囲から慕われていた千葉さんの笑顔が、家族や友人の記憶から消えることはない。


◆突発的犯行

 千葉さんは、19年1月15日午後7時50分ごろ、同大学に近い京都市左京区岩倉幡枝町の路上で、胸や腹など十数カ所を刃物で刺されて倒れているのが見つかった。自転車で友人宅に向かう途中で、直前には自転車に乗った男が大声を上げて千葉さんに詰めよるのが目撃されている。男は20歳代で身長170〜180センチ、黒いジャンパーとズボンを着ていたという。

 京都府警は下鴨署に捜査本部を設置。犯人は地元に土地勘のある男で、自転車の通行トラブルなどによる突発的な犯行とみて捜査している。これまでに、一帯の約1万5000世帯を聞き込みに回り、犯人のものとみられる足跡から、靴の販売ルートを調べた。

 また、別件での逮捕者や自殺者から関連が疑われる人物を洗ったほか、捜査員が容疑者の似顔絵を頭にたたき込み、似た人物がいないか街を歩いて目を光らせる「見当たり捜査」も行っているが、犯人にはたどりついていない。


◆漫画への情熱

 漫画家になるという子供のころからの夢をかなえるため、1年間の浪人生活を経て念願の大学に入学した千葉さん。いつもニコニコしていたという温厚な性格で、周囲は「恨みを買うとは考えられない」「あんないい奴がなぜ」などと、異口同音に語る。

 一方、千葉さんの漫画への情熱は人一倍だった。新聞配達で生活費を稼ぎながらの受験勉強で入学。大学の講義では積極的に発言し、漫画制作の資料を率先して集めるなど、熱心に取り組んだ。所属する学科以外の講義にも出席するなど、寝食を忘れて漫画の研究に没頭していたという。

 浪人時代からの友人で、大学でも同じ学科だった男子学生によると、千葉さんはストーリーより作画が得意。「僕たちが将来、漫画家としてデビューしたときには、『浪人時代から苦楽をともにした仲だ』とインタビューに答えよう」と話し合っていたという。

 千葉さんは事件直前、帰省先の仙台市の実家でも、元旦から徹夜で漫画を執筆していた。


◆犯人は近くに

 千葉さんの血痕や犯人の足跡が残されていた現場近くの畑は、すでに造成されてマンションが建っており、事件からの歳月を物語る。情報提供を呼びかける立て看板と、花が供えられた小さな花瓶のほかに、当時の形跡はない。

 母親の淳子さん(49)ら遺族は事件後、街頭に立って情報提供を呼びかけるチラシを配布。同大学の教員や友人の有志が、犯人逮捕に役立てようと、事件の概要や千葉さんの人柄を描いた漫画の冊子を制作するなど、事件解決への努力は続いている。

 また警察庁は19年12月、事件解決に結びついた情報提供に対して最大300万円を支払う懸賞金制度の対象に指定。今年12月には1年間の期間延長が決まった。

 淳子さんは「どうか犯人逮捕につながる情報を寄せてください」と、涙ながらに話したという。

 捜査本部は、現在も約40人体制で犯人を追っている。府警幹部の1人は「転居したり失跡したりすれば捜査の網にかかる。犯人は今も近くにいるはずだ」と執念をのぞかせた。

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