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2009年01月04日(日) 09時44分

五輪招致で石原慎太郎東京知事「みんなで夢を持とう」産経新聞

 東京を含む4都市が争う2016年夏季五輪の開催地が今年10月、デンマークのコペンハーゲンで開催される国際オリンピック委員会(IOC)総会で決定する。「みんなで夢を持とうじゃないか」。招致活動の先頭に立つ東京都の石原慎太郎知事は年頭にあたり、五輪開催の魅力を大いに語った。(鈴木裕一)

 −−昨年8月に北京五輪を視察した感想は

 「北京五輪と違って、東京は治安や交通の利便性など1次選考で評価されたものを生かして、もっと簡潔で印象的なオリンピックができると思いましたね」

 −−いよいよ招致活動が佳境に入ってきたが、今後の課題は

 「一番の問題は国民、都民の支持なんですよ。それをどうやって高めていくかですね。やはり80%以上の支持率がないと致命的になりますから。先日、米国のオバマ次期大統領が欧州オリンピック委員会(EOC)総会でビデオ出演し、シカゴをアピールしたことを受けて、日本のメディアは『日本は勝てない』というような趣旨の報道をしていましたが、これは本当に悲しいことです。非常に卑屈ですし、悪影響を与えていますよ」

 −−オバマ氏の影響力やシカゴの弱点についてどう分析しているか

 「アフリカの国々がどうシンパシーを感じるのか、それが票になるのか、読み切れません。ただ開催地決定にあたって、IOCが掲げる大事な条件に政府の財政保証がありますが、米国はできない。それと治安上の問題です。多くの犠牲者が出た昨年11月のインド・ムンバイでの同時テロ事件では、英国人と米国人をターゲットにしていることがはっきりしましたから。中東のテロのターゲットになっているという怖さは、もっと濃密なものになっていくと思います」

  −−東京以外の地域は冷めた目でみているようだが

 「そうじゃありません。むしろ他の都市の方が熱心に応援してくれている。逆に東京都民の方がやや意識が冷たいような感じがします」

 −−国民から支持を得るための新たな考えは

 「当初のキャッチフレーズの『オリンピックを東京に』を『日本に』に変えました。北京五輪の熱も冷めてはきましたが、やはりメダリストにこそ『日本でやろう』ということを言ってもらいたい。五輪は、楽しいからやるんです。いまの日本に楽しいことがありますか。みんなで夢を持とうじゃありませんか。夢を描くって楽しいことです」

 −−そういうことをメダリストに言ってほしい

 「そうです。JOC(日本オリンピック委員会)にはそうお願いしているのですが」

 −−IOC総会ではオバマ氏が米国の顔として演説する可能性が高い。日本の顔は不在です

 「まったくです。だから私は皇太子殿下に出ていただきたい。しかし宮内庁が五輪は政治だという。なぜ政治なのですか。政治性はあるかもしれないが、スポーツは文化です。その証左に、先に古橋広之進さんは文化勲章をいただいたでしょう。皇室は誰のためにあるのでしょうか。国民のためにあるのでしょう。私自身、皇太子殿下はやる気満々でいらっしゃると聞いています。先日、麻生太郎首相にも『頼むぞ』って話したばかりです。皇太子殿下が一番ふさわしい」

 −−欧州では王室が五輪招致の前面に出ています

 「英国では2012年五輪招致を決めるとき、バッキンガム(宮殿)で晩餐(ばんさん)会をやったみたいです。日本でもそうしたことをやってくれたらいいのですが」

 −−日本経済はいま、疲弊している。こうした状況は今後、2年も3年も続くと予測される中で、五輪開催の経済効果を前面に打ち出す考えは

 「こういう状況ですから、みなさん経済効果に関心を持つかもしれません。ですが、それをあんまり強く押し出すと、五輪の成果というのは経済的になってしまいます。それはあまり好ましくないことです。ただ、五輪にお金を使うくらいなら福祉とか教育に使ったほうがいいという人に対しては、経済効果について説明します。同時に子供の教育にとって五輪ほどすばらしい、生きた教材はないでしょう、と」

 −−何か生きる望みが希薄な時代になっている。希望を教育現場で感じてもらうためにも生の五輪を見せることが大事だと

 「そうです。それから外国でのイベントの中継と日本でのオリンピックの中継。やっぱりホームの親近感、密接感は外国とは違います。いろんな形で日本人としてのアイデンティティーができていくのだと思います。愛国心というとまた、言葉にこだわる人もいますが、強く感じあうことでの連帯感が、場合によっては愛国心になっていきます。一人一人の人生に、いろいろな意味を持ってくると思います」

 −−最後に、ずばり勝算は

 「まだまだわかりません。これから熾烈(しれつ)な、アンダーテーブルも含めた戦いが始まります。ただ日本はこういう戦いが下手なんです。日露戦争の時の明石(元二郎)大佐みたいな人がどこかにいませんかね」

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