万葉集にも詠まれた瀬戸内海の景勝地・鞆の浦(福山市)の渋滞解消などを目的に、港の一部を埋め立て架橋する計画が、昨年六月の広島県の認可申請から半年過ぎても国が結論を出さないまま越年した。
早期着工を目指す県や市は「住民の九割の賛成署名を市議会で採択した」と民意を強調するが、国は「県は橋の必要性に関し説明不足」と首を縦に振らず、通常二カ月で終わるはずの審査は事実上中断している。
中断の一因は、公有水面埋め立て法で必要としている排水権を持つ人の同意を得ていないこと。それでも県は架橋による利便性のメリットが景観を損なうマイナスを大きく上回ると判断し「異例の手続き」で埋め立て免許の認可申請に踏み切った。
これに対し、国は「根拠となるデータがそろっていない」と指摘。死亡交通事故件数など八項目について回答を求めた。
反対派住民が認可しないよう国に求めた十月には、金子一義国交相は記者会見で「一般論から言えば、風光
さらに、鞆の浦が舞台とされる
世界遺産候補地を審査する国際記念物遺跡会議(イコモス)も十月、計画の再検討を国や県に勧告し、自治体側にとっては逆風続きとなった。
十二月、中国地方整備局長は推進派市議らに「住民投票しては」と勧めたが、市議は「するつもりはない」とあっさり拒否。県も「実情が伝わっていない」として
地元住民は「地域の生活優先」「景観保護」と、今も賛否が分かれており、計画策定から四半世紀経ても、すんなり運びそうにない雲行きだ。