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2009年01月04日(日) 08時02分

ハマス 戦略なくガザ住民“盾”に 先見えぬ無差別攻撃 産経新聞

 【カイロ=村上大介】パレスチナ自治区ガザ地区に対するイスラエル軍の大規模攻撃は3日、2週間目に入った。イスラエル側は、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが標的であると主張しているが、世界でも有数の人口密集地に対する空爆は事実上の無差別空爆の様相を呈し、住民の犠牲は拡大している。しかし、イスラエルの攻撃を「虐殺」と非難するハマスも、イスラエルの攻撃を停止させ、1年半に及ぶイスラエルのガザ地区封鎖に風穴を空ける戦略を描けないまま、軍事的にほとんど無意味なイスラエルへのロケット弾攻撃を続けている。

 エルサレムに駐在する国連のロバート・セリー中東和平特別調整官は2日、イスラエルの空爆により「ガザのインフラの大部分が破壊された」と指摘し、「人道上、即時停戦が死活問題となっている」と訴えた。イスラエル軍の空爆は、ハマスが支配する自治政府関連の庁舎や警察署にとどまらず、一部の学校の校舎やモスク、病院周辺にもおよび、破壊は過去最悪の規模だ。約150万の住民は深刻な食糧や燃料不足に直面している。

 フランス通信(AFP)によると、これまでの死者は少なくとも436人、負傷者は約2300人に上る。巻き込まれた「非戦闘員」は犠牲者の40%にのぼるとの推計もあり、ガザ地区の医療関係者によると、少なくとも75人の子供が死亡した。

 ガザ地区のハマス指導者は地下に潜伏しており、シリアのダマスカスを拠点とするハマス在外指導者、ハレド・ミシュアル氏は2日夜、イスラエルの地上部隊がガザに侵攻すれば「暗黒の運命が待っている」との声明を発表、ガザ地区周辺に戦車部隊を集結させ、侵攻準備を整えているイスラエルに警告を発した。

 イスラエルは前例のないガザ地区への大規模な攻撃で2007年6月以来、ガザ地区を実効支配するハマスの基盤を徹底的に揺さぶる狙いだが、人道的な状況の悪化を招くばかりで、ハマスのガザ支配が崩壊する気配はない。

 ハマスは先月27日以来、少なくとも500発のロケット弾や迫撃砲をイスラエル領に撃ち込む一方で、「イスラエルの即時攻撃停止とガザ封鎖解除、全検問所の開放」(ミシュアル氏)を要求している。しかし、ロケット弾攻撃は結果的にイスラエルに攻撃の根拠を与えるだけになっており、ハマスにとって頼みの綱であるアラブ諸国からも「ロケット弾攻撃を停止しなければならない」(アブルゲイト・エジプト外相)という声が出るなど、住民を盾にした“瀬戸際戦術”は効果を上げていないのが実情だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090104-00000036-san-int