記事登録
2009年01月04日(日) 08時01分

法テラス、社会映す鏡 多重債務から引きこもりまで 悩めるアナタに寄り添いたい産経新聞

 雇用不安、多重債務、相続から親子げんか、ご近所トラブルまで…。さまざまな問題を抱え、1人で悩む人は多い。「そんな人に寄り添い、解決の手段をさぐる情報をお伝えできれば」というのが、平成18年10月に運営を開始した公的法人「法テラス(日本司法支援センター)」だ。本来対象としている法的トラブルとは違う相談も続々と寄せられており、その相談内容は現代社会を映し出す鏡ともなっている。

 ■この先どうなる?

 「家族がひき逃げされて病院にいます。これからどうなるんでしょう」

 「落とした財布に入れていた免許証を偽造、悪用された。今後が不安で…」

 「(引きこもりで)外に出られず、仕事もしていないが、母親が亡くなり、父親はお金も食べ物もくれない。この先、自分はどうしたらいいか」

 東京都中野区の法テラスコールセンターには、月に2万本超の電話が寄せられる。相談を受け、法的トラブルの解決に役立ちそうな制度や窓口を紹介するオペレーターによれば、「そちらに電話するような話じゃないのはわかっているんですが…といってかけてこられる方も多いですね」。

 こんな電話もあった。

 「生後まもなく引き取って本当の親子として娘を育てた。結婚し、孫もできて幸せだったのに、娘の実母が亡くなり、相続の連絡がきたことで養女とわかってから関係がぎくしゃくして口もきいてくれない」

 このケースでは自治体などの相談窓口や民生委員を紹介するが、「どこに聞いていいのかわからない人の窓口になれているのかなとも思います。社会的ニュースの関係者から、この先どうなるのかといったご相談をいただいたこともあります」と話す。

 ■親子の縁切りたい

 相談者が法的問題とは無関係と思っていても、実は法律と絡んでいることもある。嫁姑(しゅうとめ)問題で(嫁の側についた)息子と親子の縁を切りたいという母親から電話がかかってきた。「一銭も遺産を相続させたくない」という母親にオペレーターが「法的には難しい」と伝えたところ、母親は「法律が関係してくるとは思わなかったわ」。

 法的トラブルでは多重債務、急増する雇用問題、部屋の賃貸借、その他契約に関するものなども多い。相談者は名前を明かす必要はないが、別のオペレーターは「多重債務のご相談では申し訳なさそう、言いにくそうに話をされる方もいます。でも、法的にきちんとした対処法がありますし、私たちはよく扱っている話なので堂々とかけていただいて大丈夫です」という。

 夫の収入が減り、対策の話し合いもできないまま借金をしたので、返済の相談も夫にはできないという内容の電話もある。「家族の関係が希薄になっているのかなという気がします」と複雑な思いを抱くこともある。

 ■死なずにすみます

 一方で、相続問題で2年前に相談したという人から「やっと解決しました」と連絡があったり、借金問題で泣きながらかけてきた女性が、「これで死なずにすみます」とつぶやいたり。「聞いてもらえてうれしかった」とお礼をいう人もいる。オペレーターたちの思いは一つだ。「困っている方が、電話してよかったと思えるもの(情報)を一つでも渡せるといいな」

 法テラスの石山宏樹総務課長は、「誰にも相談できず孤独を抱えている人が多い社会で『悩んでいる方の隣に寄り添うような存在』でありたい。困ったことがあれば、お電話ください」と話している。

 コールセンターは(電)0570・078374(新年は5日から)。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090104-00000032-san-soci