記事登録
2009年01月03日(土) 02時09分

鹿島裏金、本格捜査へ 脱税容疑でコンサル側を立件産経新聞

 ゼネコン最大手「鹿島」(東京)の約5億円にのぼる裏金問題で、鹿島と取引のあるコンサルタント会社(大分)側が、裏金の一部などを受け取りながら税務申告していなかった疑いの強いことが2日、分かった。東京地検特捜部は、裏金がつくられた経緯に重大な関心を寄せているもようで、今月中旬以降、捜査体制を整備。法人・所得両税法違反(脱税)の容疑でコンサル会社側を立件するとともに、裏金問題の全容解明に向け、コンサル会社の社長(65)や鹿島側から事情を聴くなど捜査を本格化させるとみられる。

 裏金がつくられたのは、精密機器大手「キヤノン」(東京)の子会社「大分キヤノンマテリアル」(大分)が平成17年に受注した、大分市内のプリンター関連工場の用地造成工事。

 関係者によると、鹿島は用地を所有していた「大分県土地開発公社」(同)から造成工事を受注したが、大阪市の業者に孫請けさせた工事が架空で、代金約5億円を裏金にしていた。この一部がコンサル会社側に流れたほか、コンサル会社側は鹿島から受領した正規の手数料約13億円の一部も架空経費の計上によって隠し、法人としてのコンサル会社と社長個人で総額数億円を税務申告せず、法人税と所得税を脱税した疑い。

 社長の兄は大分出身の御手洗冨士夫キヤノン会長と高校の同級生で、キヤノンは「(社長は御手洗会長の)高校の後輩でもあり、友人に近い関係」と説明。社長が経営する別の複数の企業も、キヤノン関連の事業を多数受注していた。キヤノンは、造成工事を鹿島へ発注するよう公社に文書で要請。鹿島が随意契約で受注しており、裏金の一部は、キヤノングループを得意先とするコンサル会社側に対する受注工作への協力謝礼だった可能性がある。

 鹿島は、造成後の用地を公社から購入したキヤノン側から、工場の建設工事も受注。広瀬勝貞大分県知事も会見で「(社長を)よく知っている。選挙の関係でお世話になった」と説明している。この工場と、隣接するキヤノン子会社「大分キヤノン」(同)のデジタルカメラ工場は、県が誘致。特捜部は脱税捜査を突破口に、県とキヤノン双方に人脈のある社長側と鹿島が「一体」で行ったとみられる工事受注工作の解明を進めるものとみられる。

 鹿島広報室の話「5億円の件はすでに納税している。(コンサル会社側の)脱税は全く関知していない」

 キヤノン広報部の話「(裏金づくりの)当事者ではなく、コメントする立場にない」

 ■鹿島裏金問題 鹿島が東京国税局の税務調査を受け、平成18年3月期までの2年間に約6億円の所得隠しを指摘されていた事実が19年12月、表面化。鹿島はこのうち約5億円の使途を、国税局に対して明らかにしなかったことから、国税局はこの裏金約5億円を使途秘匿金と認定して制裁課税した。故金丸信元自民党副総裁の脱税やゼネコン汚職の相次ぐ摘発により、「企業の使途不明金は不正の温床」とする批判が強まったことから、使途不明金を使途秘匿金と呼び制裁課税の対象とする新たな税制が、6年から導入された。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090103-00000509-san-soci