記事登録
2009年01月03日(土) 01時08分

新銀行東京、旧経営陣を刑事告発へ 背任視野に経営責任を追及産経新聞

 東京都が出資する経営再建中の新銀行東京(津島隆一代表執行役)が、ずさん融資で不良債権を増大させ同行に損害を与えたとして、背任罪を視野に旧経営陣の刑事告発に踏み切る方針を固めたことが2日、分かった。新銀行は旧経営陣の責任を追及するための弁護士らによる外部調査機関を設置し、元同行幹部や行員らに事情聴取を行うなど詰めの調査を急いでおり、近く調査結果を公表、旧経営陣の告発方針も明らかにする。

 外部調査機関は、平成17年4月の開業から18年12月までの間、旧経営陣が適切なデフォルト(債務不履行)防止策を取らずに融資拡大路線を強硬に推し進め、同行に多大の損失を与えた点を重視。数カ月後の破綻(はたん)が予測でき、回収不能が明らかな企業への融資を積極的に推奨、もしくは容認していたとみている。

 また、旧経営陣の仁司泰正元代表執行役(68)ら一部執行役が経営全般の監視を行っていた取締役会に対し、デフォルト発生防止対策について事実と異なる「楽観的」な報告を行い、十分な説明をしていなかったとみており、正確な情報を隠蔽(いんぺい)していたとの見方を強めている。

 新銀行の内部調査などによると、同行は昨年3月末時点で融資先2300社以上が破綻、総額約285億円が回収不能となった。「返済が滞ってもまともに回収しない状態」(元行員)が続いたとされる。

 新銀行をめぐっては昨年10月、元行員がブローカーと結託し、融資金を詐取した事件が発覚。元行員ら6人が詐欺罪で起訴された。内部調査では、これまでに「詐欺的要素の強い」融資案件が約35件確認されているほか、金融庁が昨年12月26日、新銀行に業務改善命令を発出。法令順守態勢や融資金の詐欺事件に関連する再発防止策について「十分な取り組みを行っていない」と指摘し、1月26日までに業務改善計画を提出するよう求めている。 

 こうしたことなどからも、外部調査機関や新経営陣側は、旧経営陣が新銀行の経営悪化を招いたと判断。刑事告発による追及で、責任を明確にする意向だ。新銀行設立を主導した石原慎太郎知事もこれまで「経営者の才覚に問題があった」などと旧経営陣の責任を強調している。ただ、都議会の野党会派は「知事は責任をなすりつけている」と批判している。

 ■新銀行東京 資金繰りに苦しむ中小企業の支援を目的に東京都が1000億円を出資して平成17年4月に開業。無担保融資により多額の焦げ付きが発生し、仁司泰正元代表執行役ら旧経営陣が18年6月に引責辞任、20年3月期決算では1016億円の累積赤字を計上した。同年、都は400億円の追加出資と赤字を一掃する減資を実行した。20年9月中間決算は70億円の赤字で、店舗の統廃合などリストラを進めたことで赤字幅は前年同期から16億円減少。景気低迷に伴う融資先の経営悪化で、不良債権処理額が前年同期比47・5%増となったが、昨年2月に発表した再建計画で明示した業績目標はほぼ達成している。

【関連記事】
金融庁、新銀行東京に業務改善命令
【主張】新銀行東京 改善命令機に撤退準備も
新銀行東京融資詐欺 元行員ら3人を再逮捕
新銀行東京・融資詐欺 「三菱東京」も焦げ付き、マルチ業者も関与
「だまって聞けっ!」都議会、知事の一喝にシーン

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090103-00000505-san-soci