兵役の代わりに奉仕活動をする権利を使って来日したドイツ人のクリスチャン・ジーベルトさん(20)が、廿日市市の特別養護老人ホームで働いている。平和への強い願いを胸に刻み、母国の戦争への反省から選んだ進路である。
高齢者58人が入所する「清鈴園」で週5日、生活の世話やシーツ交換をしている。「もう一口、食べましょう」と慣れない日本語で話し掛けながら食事の介助をする。「クリス」と呼ばれ、親しまれている。
母国は18歳以上の男性に9カ月間の兵役義務がある。給料が出る軍隊に入るかどうか心は揺れたが、「良心的兵役拒否権」を使った。「2度の大戦で多くの人を死なせた反省に立てば、ドイツは軍隊を持つべきでない。その一員になりたくなかった」と明かす。
滞在は8月末まで。「いい人たちに囲まれて幸せ。お年寄りが快適に過ごせるよういつも笑顔で接したい」と意気込んでいる。
【写真説明】笑顔でお年寄りに声を掛けるジーベルトさん