景気回復に向けた正念場となる二〇〇九年の日本経済は、エンジン役を担っていた輸出の落ち込みをきっかけに、急速に悪化し、マイナス成長が避けられそうにない。デフレ懸念の強まりや雇用情勢の悪化も予想され、景気回復にはいばらの道が続く。
国際通貨基金(IMF)は日本の〇九年の実質経済成長率をマイナス0・2%と予測。日銀は一月下旬に「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」の中間評価を公表し、〇九年度の実質経済成長率予想を0・6%のプラス成長からマイナス成長に下方修正する見通しだ。
マイナス成長の主因は輸出減。金融危機を受けて米国でローンによる自動車や家電の購入が急減しているためで、専門家の間でも「輸出は〇九年前半まで厳しい状況が続くだろう」(
輸出減は、トヨタ自動車など日本を代表するメーカーを減産や生産休止に追い込み、非正規労働者らの人員削減が相次いでいる。「〇九年前半は正社員の雇用にまで調整圧力が働く」(第一生命経済研究所の
そんな中、プラス材料が原油価格の下落。〇八年七月に一バレル=一四七ドルの史上最高値を付けた原油価格は、十二月には一時三〇ドル台に急落した。これが企業の原材料価格の低下を招き「企業収益の減少に歯止めがかかるのではないか」(同)との期待もある。
ただ、原油価格の下落はデフレ懸念を強める原因にもなる。原油価格が高騰した〇八年夏に全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比2・4%上昇するなどインフレ圧力が強まったが、原油価格急落後の同年十一月には前年同月比上昇率が1・0%に低下した。
消費者物価は〇九年夏には「前年同月比2%程度下落する」(
景気悪化で正社員の残業代カットや賃下げが広範囲に及べば個人消費の一段の落ち込みにつながり、景気悪化と物価下落が相互に悪影響を与える「デフレスパイラル」に陥る可能性もある。
日銀は国内景気の回復時期を〇九年度半ば以降とするが、坂を転げ落ちるように景気が悪化していることから「底打ちは一〇年度になる」(同)との見通しが多くなっている。
日銀幹部は「景気悪化が急なら、回復も急になる」と話すが、景気の不透明感は増している。消費者や企業のマインドは冷え込んでおり、景気後退局面の長期化がいよいよ現実味を帯びてきた。