広島市が家庭ごみ収集の有料化に向けた準備を進めている。全国の先駆けとなった分別収集によるごみ減量化が限界に直面する中、排出量と処理費の抑制を図るためだ。広島県内の市町のほぼ半数が導入する手法だが、厳しい経済情勢下で実施すれば市民の不満を増幅させる可能性もある。市は市議会への提案時期を慎重に探っている。
今月4日。広島市廃棄物処理事業審議会の古川隆会長は市役所で秋葉忠利市長と向かい合った。「賛否両論はあったが、やむを得ないと全員一致で決めました」。1年9カ月の議論を経て有料化を「有効かつ必要」と答申した。市は「お墨付き」を得たことで、導入時期や料金、関係条例案などの具体的な検討作業に入った。
市によると07年度の家庭ごみ排出量は76年度比で1.7倍の約22万9000トン。事業ごみと合わせた処理費は同年度で約126億円と、10年前より約9億円増えた。分別徹底の意識啓発にも限界がある—。審議会もそう受け止めた。
広島市が他の政令市を参考に「ごみ1リットルにつき1円」と試算したところ、平均的な世帯の負担額は1カ月190円、年間2280円となった。有料化で市民が意識してごみを減らせば、年間の排出量で3万9000トン、処理費では2億6000万円の圧縮が可能。
広島市が答申通り有料化に踏み切るにしても市民に事前に説明責任を果たすことが前提となる。関係条例案の議会提出は、最も早くて2月。担当者は「少なくとも1年間は周知期間を設ける必要がある」としており、導入は最短で2010年春以降となる見通しだ。
【写真説明】現在は多様な袋に入れて出される家庭ごみ。有料化されれば市の指定袋に限ることも検討されている(広島市中区)