2008年12月28日(日) 12時20分
【腐敗水点滴】「まさか…」夫も義父も絶句 注入した女の素顔(産経新聞)
「病気がひどくなれば、ずっと側にいて看病してやれると思った。殺すつもりはなかった…」
重病に冒されたわが子を懸命に看病していたはずの母親は、1歳10カ月の五女が横たわる集中治療室(ICU)で医師と警察官に囲まれ、うなだれた。
◆逮捕に絶句
京都大学付属病院(京都市左京区)に入院していた五女の点滴に、腐敗して細菌が混入した液体を注入したとして、殺人未遂容疑で岐阜県関市に住む女(35)が逮捕された事件。女は過去、3人の子供を幼いころに亡くしており、五女に対する愛情は人一倍だと信じていた家族は、「まさか」と絶句した。
五女は11月27日、胃腸の調子が悪いとして岐阜県内の大学病院に入院し、その直後から重い感染症を発病。12月2日に重症患者として京大病院に転院した。
すぐに血液検査を行ったところ、通常は血液中に存在しない複数種類の細菌を検出。症状が悪化したため、7日からは集中治療室(ICU)に入った。
一方、五女の入院直後から女に不審な行動があったため、病院側は11日、京都府警に連絡。12日からはICUに設置されたビデオ映像の録画を始めたところ、同日夜には女がポケットから何かを取り出すような行動が写っていた。
さらに23日には、女がカメラに写らない角度で五女の点滴につながる管を隠し、五女を抱きかかえるようにしながら、ポケットから何かを取り出す様子を、カメラ越しに医師と警察官が確認。「何をしているのか」と問い詰めると、注入したことを認めた。持っていたハンドバッグとスカートのポケットからは注射器が見つかった。
京都府警の調べに対して、女は「スポーツ飲料と水道水を混ぜて1週間〜10日間ぐらい放置し、面会時間中に点滴に注入した」と供述。女は少なくとも12月12、13、22、23日の4回、五女の点滴に液体を注入したことを認めているという。
◆治療方針まで相談
女は、京大病院に免疫治療の専門家がいることから、自ら希望して五女を転院させていた。しかし、この時にはすでに重い感染症を患っており、京大病院の関係者は「人為的な理由で感染症にかかった可能性が高い」とみている。
女は、1日2回の面会時間には必ず訪れ、五女を長い時間抱くなど熱心に看病。五女と離れたくない様子で、医師に対して「治りますか」などと積極的に質問し、病院側と治療方針を相談している。
五女は、女が点滴に液体を注入した直後に高熱を出すなどの症状を繰り返しており、病院側は命にかかわる状態であることを女に伝えたという。
京都府警は、女が、子供を病気などに仕立て上げて看病するような行動がみられる「代理ミュンヒハウゼン症候群」だった可能性もあるとみて調べている。
ミュンヒハウゼン症候群は、実在の人物であるドイツのミュンヒハウゼン男爵が「ほら吹き男爵」と呼ばれたというエピソードから名付けられた、自傷行為などを繰り返して周囲の目を引きつけようとする精神疾患で、傷害行為が他者など(主に子供)である場合に「代理−」と呼ばれる。
◆過去に3人も
女は、夫(49)と長女(13)、夫の両親の6人暮らし。平成6年に結婚し、しばらくして長女、次女が相次いで生まれた。しかし、次女は1歳半ごろから入退院を繰り返すようになり、13年に4歳で死亡。これ以後、女は自室にこもりがちになったという。次いで生まれた三女は2歳、四女は18年にわずか9カ月で亡くなった。
今回の事件について、夫は「信じられない。何かの間違いだと思う」と絶句。義父は「病院に通う生活が続いても嫁は愚痴ひとつこぼさなかった。子供を心の底からかわいがっていたと思う」と、絞り出すように話した。
岐阜県中濃子ども相談センターや関市子育て支援課によると、これまでに児童虐待が疑われたことはなかったという。
一時、命の危険があるほど重症だった五女は現在、回復に向かっているという。京都府警は、病死とされた3児が死亡した経緯についても、女から慎重に事情を聴いている。
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