2008年12月27日(土) 18時37分
当事者意識が低い若者 企業側からみた公教育への提言(産経新聞)
■島村元紹・日本商工会議所教育委員長代理に聞く
教師にしかられたことがない新入社員が多いという。学校教育では学力テストをめぐる論議のように、企業社会では当たり前の「競争」も否定されがちだ。日本商工会議所教育委員長代理で島村楽器社長の島村元紹(もとつぐ)氏に企業側からみた公教育への提言などを聞いた。
−−若者をどう見るか
「自分の人生に対する“当事者意識”が非常に低い印象を受ける。親や社会など周りを当てにして、自分が何とかしなくても、何となく生きていけると思っている。一番困るのは、自分を変える努力をしないことだ。仕事が辛くなると『自分に向いていない』と簡単に結論を出してしまう」
−−企業としてどう対応しているか
「自分が変われば周りが変わることを実感させる教育が大切だ。そのために上司は会社の価値観を共有させ、『朝食は食べたか』などと私生活にも干渉している。客への対応を工夫して変えれば、客の反応が変わってくる、そういうことに気づくようになると、次第に仕事への当事者意識が出てくる。仕事がおもしろくなり、入社時は子供のようだった顔が、大人の顔つきに変わる。私は『成人30歳説』だ(笑)」
−−学校教育は
「教師にしかられたことがないという新入社員が多く、しかると逆に『そこまで自分のことを考えてくれるのか』と新鮮な受け止め方をされることもある。昔の教師はよくしかったが、一方で私生活も返上して子供たちの面倒をみてくれていた。私にとって恩師は『聖職』そのものだった」
−−どんな改革が必要か
「教師が本気になるしかないが、企業側の視点でいえば、校長がリーダーとしてしっかりしなければ、学校という組織が活力ある集団に変わることはできない。教師一人一人を評価し、一生懸命やっている教師と、そうでない教師とを区別してやるべきだ」
−−教育行政は
「教師や学校のためにバックアップ体制が必要。そのためには首長のリーダーシップが必要だ。教育行政は建前上、知事部局から独立しているが、東京都は石原慎太郎氏が知事になって教育が大きく変わった。大阪府の橋下徹知事も挑戦的だ。知事がしっかりしているところは教育改革が進んでいる。行政が教育施策を教育委員会という見えにくい場所で決めるだけではなく、国民に選ばれた知事が権限を行使できるようにすべきではないか」
−−公教育のあり方は
「昔の公立校は期末テストの結果を廊下に張り出したりしていたが、最近は生徒の勉強意欲を引き出す意味での競争原理まで否定してしまった。文部科学省が一時、全国学力テストをやめてしまったのも問題だ。自分の地域の学校がどうすればよくなるかを関係者が真剣に考えれば、成果は必ず出る。学校や地域の当事者意識を高めるためにも、全国学力テストの成績順位の公表は必要だ」
−−学習指導要領が改定されたが
「改正された教育基本法に沿って、道徳を教科化すべきだった。イデオロギーに関係なく、愛国心を持った立派な日本人をつくってほしい。若者には日本という国への愛情が薄いが、そんな国民は海外で相手にされない。企業人としても、国民としても、自分が属しているものに愛情があるからこそ当事者としてがんばる気持ちになるのは、同じことだろう」
■しまむら・もとつぐ 昭和8年、東京都生まれ。早稲田大学第二政経学部を中退して家業の文具店を継ぎ、昭和44年、島村楽器設立。日本商工会議所教育委員長代理。
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