2008年12月27日(土) 10時12分
裁判員制度で特需? 法廷ミステリーに脚光(産経新聞)
裁判員制度のスタートを来年5月に控え、書店では法廷を舞台にしたサスペンスやミステリー小説の棚がにぎわってきた。弁護士の法律解説を加えたり、過去の名作の装丁や帯を一新したり。制度の仕組みや問題点を物語仕立てで学べるなど、売れ行きも好調だという。(海老沢類)
新潮社が8月末に刊行した『犯意その罪の読み取り方』は、サスペンス小説と専門家の法律解説を組み合わせた異色の一冊だ。作家の乃南アサさんが、殺人や強盗事件を題材に12の短編を執筆し、甲南大法科大学院教授の園田寿弁護士が適用される罪名を指摘。共犯関係の有無、殺人か自殺教唆か…など、難しい判断を求められる審理のポイントを解説した。
「犯人の内面に踏み込んで普遍性のある物語を書けるのは力量のある作家だけ。かみ砕いた用語説明も好評で、既存の法律解説書に比べ売れ行きは格段にいい」と担当編集者の西村博一さん。裁判員候補者名簿への記載通知発送に合わせ、3刷を決めたという。
『死刑基準』(幻冬舎)は、生身の人間を前に死刑判決を下せるのかという重い問いを投げかける。死刑廃止論者だった弁護士が、妊娠中の妻が殺され、死刑容認に転じる。被告は殺人容疑をかたくなに否認し、裁判は意外な結末に。死刑制度をめぐる海外の動向にも触れ、市民が量刑を決める制度の重さを訴える。
弁護士の加茂隆康さんの小説デビュー作だが、制度を意識した帯を付けたことも奏功。11月末の発売から2万部を発行した。「現役弁護士だからこそ書ける迫力ある法廷シーンも魅力」と同社の石原正康専務。
丸善丸の内本店(東京都千代田区)では、裁判員制度を解説するガイド本の横に、アガサ・クリスティーの『検察側の証人』、芦辺拓さんの『十三番目の陪審員』など新旧5作品を置いた。「冤罪(えんざい)事件を扱うなど市民参加の問題点をついた作品も多く、制度を改めて考えるきっかけになる」と同店。制度スタートを前に、各地で書店の特設コーナーも広がりそうだ。
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