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2008年12月25日(木) 20時50分

<田母神前空幕長>防衛省、幕引き優先 報告書提出毎日新聞

 防衛省は25日、政府見解に反する論文公表で更迭された田母神(たもがみ)俊雄前航空幕僚長の問題に関する調査報告書を政府の防衛省改革会議に提出した。あいまいだった対外的な論文公表の省内手続きを明確化するなどの再発防止策が柱。問題の原因については「幕僚長の自覚が不十分だった」とするにとどめた。自衛隊幹部人事や歴史教育見直しの具体策にも踏み込まず、「幕引き」を優先する内容となった。

 田母神氏の定年退職は「現実的に最も厳しい措置」と位置づけ、任命責任への言及はなかった。懸賞論文に空自第6航空団や航空救難団などから97人が集団応募したことについては「社会的影響をもたらす可能性に配慮すべきだった」と指摘。そのうえで、幹部学校などでは戦史教育がほとんどで政府見解と異なる歴史認識を教育している例は確認されなかったとしている。

 しかし、一部の教材には「戦争原因は欧米列強の侵略からの自衛」「日本人は敗戦で賤民(せんみん)意識で自らを卑下」など、田母神論文と似た表現があった。懸賞論文を周知した空自内部の文書にも「懸賞は現在空自が進めている歴史に重点を置いた精神教育に寄与する」など前空幕長の影響をうかがわせる記述があったが、報告書は分析していない。

 一方、再発防止策では、幹部以外の意見発表の手続きが不明確だったため、(1)職務にかかわる場合は懸賞論文や私的サークルでも届け出る(2)具体的な内容を届ける−−などの対策を盛った。将官人事の「適切な選考」や教育の統一方針策定を明記したが、具体策については今後の検討にとどめた。【松尾良】

 ◇田母神前空幕長更迭の報告書骨子

・空自が集団応募した論文には問題なし

・前空幕長の関与は確認されず

・幹部の歴史教育はほぼ問題なし

・統幕学校の講座「歴史観・国家観」はバランスを欠いた。見直す

・対外的な論文公表の手続きを明確化

・懸賞論文や部外に配る刊行物も届け出対象化

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