生活保護制度の見直しで老齢加算と母子加算を削減、廃止したのは生存権を保障した憲法に違反するなどとして、広島県内の男女27人が県と5市に廃止決定の取り消しなどを求めた訴訟の判決が25日、広島地裁であった。能勢顕男裁判長は「厚生労働相の判断は不合理とまでは言えない」として、原告側の請求をいずれも退けた。
全国10地裁で提起されている同種訴訟では、老齢加算の削減、廃止を「合憲」とした6月の東京地裁判決に次ぐ司法判断。裁量範囲を逸脱して違憲違法かどうかが争点となっていた。
訴えによると、原告のうち25人が老齢加算、2人が母子加算を含む生活保護費を受給していた。しかし、厚労省はいずれの加算も段階的な削減、廃止の方針を打ち出し、現在は母子加算の一部を除いて廃止。広島市なども同様の措置を取った。
原告側は、保護基準の変更について「健康で文化的な最低限度の生活を侵害し、裁量権の範囲を逸脱、乱用した違憲違法な措置」と主張。さらに廃止の結論は、厚労省が根拠とした「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」の提言内容と異なる点を強く訴えた。
被告側は「委員会では特別需要がないことが認められた。裁量権の範囲内で適法」と反論していた。
初の司法判断となった東京地裁判決は、老齢加算の削減、廃止について「『最低限度の生活』の需要を満たしていないとはいえない。裁量権の逸脱はない」と指摘している。
【写真説明】横断幕を掲げ広島地裁へ向かう生活保護訴訟の原告ら=25日午前9時50分、広島市中区上八丁堀(撮影・藤井康正)