2008年12月24日(水) 22時08分
コレラ・食糧危機・経済破綻…大統領への辞任圧力強まるジンバブエ(産経新聞)
【ロンドン=木村正人】アフリカ・ジンバブエのムガベ大統領に対する欧米の辞任圧力が強まっている。ムガベ氏が野党との連立合意を守らないため、行政機能が停止し、ゴミや下水があふれてコレラが流行、死者は1000人を突破した。感染者は南アフリカなど周辺国にも広がった。ムガベ氏の悪政がもはや国内問題では済まなくなったとして、欧米はアフリカ諸国にも制裁強化を呼びかけている。
ジンバブエの与野党による連立合意を見守ってきたライス米国務長官はフランス通信(AFP)に対し、「ジンバブエへの制裁を強化するときが来た」と述べ、ムガベ氏側近の渡航制限や関係が深い企業への制裁強化を欧州連合(EU)加盟国やアフリカ諸国と協議する考えを示した。
EU議長国・フランスのサルコジ大統領も「話し合いの時期は過ぎた」と、ムガベ氏に辞任を迫っている。
これに対し、ムガベ氏は与党、ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線の年次総会で「ジンバブエは私のものだ」と、1980年の独立以来続く独裁政権へのすさまじい執念を見せた。
同国では今年3月に大統領選が行われたが、ムガベ政権が野党勢力を弾圧。ムベキ前南ア大統領の仲介により、ムガベ氏が大統領に留まり、最大野党、民主変革運動(MDC)のツァンギライ議長が首相に就任する連立合意が9月に成立した。しかし、報復を恐れるムガベ氏が軍や治安組織の権限掌握に固執したため、交渉は頓挫した。
実勢で年率150億%の超インフレで同国経済は完全に破綻(はたん)。国連人道問題調整事務所のまとめでは、コレラによる死者は1123人、感染者は約2万1000人に達した。感染は南ア、ボツワナ、ザンビア、マラウイにまで広がっている。さらに、ジンバブエでは人口の半数に相当する550万人への食糧支援が必要だと、国連が指摘した。
国際シンクタンク「国際危機グループ」(本部・ブリュッセル)の報告では、女性人権活動家が失跡するなど野党勢力への弾圧は続いており、スタインバーグ会長代理は産経新聞に対し電話で「どれほどひどい犠牲を国民に強いても、ムガベ氏が欧米の圧力に屈して辞任することはあり得ない。与野党が関与しない中立の暫定政府を設置するなど特別な解決策が必要だ」と語った。
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