指定暴力団の稲川会が、東京・六本木の本部事務所を移転する可能性が出ていることがわかった。
同会は21都道県に拠点を持ち、全国22の指定暴力団の中で山口組、住吉会に次ぐ約4800人の構成員を抱える。こうした巨大組織の暴力団本部が移転した例は少なく、移転先の地域住民の生活が脅かされ、大きな混乱を招くのは必至。警視庁は、東京都心の同会の縄張りを管轄する各警察署に対し、情報収集の強化を指示するなど、監視を強めている。
同庁関係者によると、稲川会は約35年前から、旧防衛庁跡地の東京ミッドタウンに面した港区六本木7にある、7階建て雑居ビルの一部フロアを、「稲川興業」の名称で本部事務所として使用してきた。
ところが、このビルの老朽化が進み、ビルを所有する都内の不動産会社が建て替えを計画。すでに立ち退き交渉が始まっており、ビルに入っていたテナントは、ほとんどがすでに退去している。
移転の時期については、「来年春ごろ、入居契約の期限が切れる」との情報があるという。そのため、同庁は、都内を中心に移転先の候補地となる可能性の高い場所の割り出しを急いでいる。稲川会は、横浜市や川崎市など神奈川県内にも古くから地盤を持っており、横浜市内には組の会合で使用する拠点施設があることから、同庁は同県警と連携して警戒を強めている。
暴力団事務所は、移転先の地域住民にとって大きな脅威になるばかりか、安全な暮らしが脅かされるため、その動向は重大な関心事だ。最近では、一般市民も巻き添えになった抗争事件に絡み、福岡県久留米市の「道仁会」本部事務所の周辺住民が、同事務所の追放運動を展開している。
稲川会も過去に数々の抗争事件を引き起こしており、同庁のある幹部は、「地域住民の安全を確保するため、移転先が明らかになった場合、住民と一体となって排除を進める」としている。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081222-OYT1T00904.htm?from=main2