警察官が暴走族の少年に拳銃を一時奪われる事件が21日未明、神奈川県南足柄市の市道で起きた。パトカーで暴走族の取り締まりをしていた県警松田署地域課の男性巡査(30)が、実弾5発が込められた拳銃と手錠を強奪され、同署は、強盗致傷と公務執行妨害容疑でペルー国籍の私立高校3年の男子生徒(17)と無職少年(16)を逮捕。拳銃は使用されなかったが、容疑者と格闘した巡査は、ひざを擦りむいたほか、首などに全治1週間程度の軽傷を負った。
現場は、箱根山と丹沢の山々が見下ろす人口約4万4000人の静かな街。21日午前1時半ごろ、市の東に位置する秦野市を本拠地とする暴走族がけたたましい音を立てながら押し寄せてきた。通報を受けたパトカー1台が午前2時15分ごろ、バイク7、8台で暴走する集団を発見した。
捕りものの対象となったのは、最後尾で蛇行しながら追跡を妨害する“ケツ持ち”役の2人組だ。スキを見てパトカーが追い抜いて停止し、巡査長(34)が開けたドアにバイクが激突。走って逃げる2人を助手席にいた巡査が追い、約300メートル先の路地で追いつき、格闘となった。
ペルー国籍の少年は身長172センチ、90キロでラグビー選手のような体格だったという。背後から少年の特攻服につかみかかった警官にタックルで反撃。ねじ伏せるとフロントヘッドロックをかけながら「拳銃! 拳銃を抜き取れ!」ともう一人の少年に指示。首を絞められた巡査が気を失いそうになったスキに、182センチのやせ形の少年が、ワイヤ入りの吊(つ)りヒモとの着脱部のネジを手でゆるめ、拳銃を奪い取り、ケースから手錠も抜き取った。
さらに逃走を続けた2人は、近くの酒匂川支流の狩川沿いにある民家の広い庭に侵入。300坪の敷地内にある生け垣の裏側にうつぶせになって身を潜めた。だが、民家の防犯センサーが作動してランプが点灯。他のパトカーで加勢に駆けつけた警官がランプを目印に発見。格闘から約15分後の午前2時半ごろ、御用となった。2人は抵抗せずに「オレたちがやりました」とその場で拳銃と手錠を差し出し「奪わないと反撃されると思った」と容疑を認め、素直に取り調べに応じているという。
拳銃を奪われた警察官について、同署では「今回は前向きな公務執行をした上で起きたこと」として処分はしない方針。大越紳二副署長は「拳銃を奪われた事実は極めて重く受け止めている。再発防止に万全を期したい」と話した。
http://hochi.yomiuri.co.jp/topics/news/20081222-OHT1T00053.htm