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2008年12月22日(月) 20時52分

<重要課題推進枠>社会保障予算案…舛添氏主導で実現毎日新聞

 産科、救急など不足が際だつ診療科の勤務医への手当、出産育児一時金の4万円上積み、難病対策費の4倍増−−。09年度予算案の重要課題推進枠に盛り込まれた社会保障分野の予算は、舛添要一厚生労働相が主導し、消極的な厚労官僚の尻をたたいて実現させた。医療現場も「まずは必要なカネ」と、一定の評価をしている。ただ応急的な色彩はぬぐえず、今後制度に反映させ、継続させていけるかどうかが問われる。

 厚労省は09年度予算編成で、社会保障費の2200億円抑制方針を財務省に緩めてもらうことを重視するあまり、同省から新規財源を得ることに及び腰となっていた。医師不足問題にも、「人口減で将来医師過剰になる」と、重い腰を上げようとしなかった。

 そこに目をつけたのが年金記録漏れ問題で精彩を欠き、再浮上を狙っていた舛添氏だ。「医師不足」を唱え、役人が抵抗するや「官僚と闘う舛添」を演出。次々直属の有識者会議をつくり、予算要求の根拠となる「ビジョン」を打ち上げた。一連の施策は支持率急落にあえぎ、予算の目玉が欲しい麻生太郎首相の思惑とも合致した。

 政府は08年度の診療報酬改定で、産科などの報酬を厚くした。しかし、勤務医の収入が増える保証はない。病院経営者が増収分を人件費でなく設備投資に回しても、国にそれを止める手だてはないからだ。

 舛添氏主導の税による所得保証は、専門や腕で評価に差がつくことに否定的な医療界に風穴を開けるものだ。それでも単なる予算措置では、「いつなくなるか分からない」との現場の不安を消せない。恒久的な制度への格上げを要する。

 出産育児一時金の引き上げをめぐり、舛添氏は年約450億円の所要財源を「全額税負担」と説明し、関係者の同意を取り付けた。しかし、ふたをあけると国庫負担は約190億円(満年度分)で、しかも1年半限り。厚労官僚が舛添氏に抵抗した理由の一つは、「継続性が担保できるのか」という点だ。同省はいずれ所要財源を保険料でまかなう意向だが、企業負担の増加を嫌う経済界の同意を、今後得なければならない。【吉田啓志】

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